コロナ第11波到来 ワクチン接種費用の助成は「秋まで待たずに、いま」再開すべきだ
重症化は高率に予防、問題は「何回」接種すべきか
コロナについては、まだ分からないことが多い。専門家がすべきは、現時点でのコンセンサスと分からないことを伝え、国民、主治医とともに判断する材料を提供することだ。 コロナワクチンの感染予防効果は決して高いとは言えないが、重症化は高率に予防する。問題は、何回接種すべきかだ。この問題については、現時点で医学的なコンセンサスは形成されていないが、いくつか研究結果が報告されている。 その一つが、今年2月、英国の研究チームが英『ランセット』誌に報告したものだ。彼らは英国のワクチン接種データベースに登録された約6820万人のデータを用いて、ワクチン接種回数と重症化の関係を調べた。 この研究では4回以上の接種を標準として、それ以下の接種回数と比較している。4回以上の接種を済ませていたのは約3880万人(57%)で、残りの約2940万人(43%)の接種回数は3回以下だったが、4回以上の接種者と比べて、3回以下の人は重症化するリスクが高かった。特に75歳以上の高齢者でその傾向が強く、未接種(0回接種)で3.1倍、3回接種で2.7倍だ。 この研究結果を解釈するにあたり、二つの可能性がある。一つは、高齢者に対しては、少なくとも4回以上の接種が必要である可能性、もう一つは最終接種から間隔があくと、感染予防だけでなく、重症化の予防効果も低減する可能性だ。現時点で、いずれの影響が強いのか、結論は出ていない。 ただ、コロナは、一回感染すれば、永久免疫を獲得する麻疹や風疹と異なり、インフルエンザのように何度も感染を繰り返す。感染やワクチン接種から時間が経てば、免疫が弱まる。このような感染症では、定期的なワクチン接種が必要なのだろう。
自己負担では接種できる人が限られる
世界は、その準備を進めている。わが国も同様だ。今秋からコロナワクチンの定期接種が始まる。対象は65歳以上あるいは60~64歳で基礎疾患がある人だ。費用は原則として有料だが、自己負担が最大7000円となるよう助成される。米CDCと異なり、接種対象者を限定しているものの時宜を得た対応である。 ただし、私が疑問に思うのは、厚生労働省が秋まで接種開始を待つことだ。同省のホームページには、公費接種が終了した今年4月1日から今秋の定期接種開始までは、「ご希望の方は、任意接種として、自費で接種していただくことになります」とある。私が勤務するナビタスクリニック新宿の場合、コロナワクチンの接種費用は1万7600円だ。大きな負担である。 これはナンセンスだ。2023~24年の冬にワクチンを接種していない人は、少なくとも1年程度、コロナワクチンを接種していない。免疫は低下しており、重症化しやすい。高齢者に限定すれば、今夏にワクチンを接種することは、デメリットよりメリットの方が遥かに大きいだろう。なぜ、コロナワクチンの定期接種を数カ月早めなかったのだろうか。 厚労省にも言い分はあるだろう。現在、わが国で流通しているコロナワクチンは、オミクロン株対応1価ワクチン(XBB.1)だ。一方、世界で感染が拡大しているのは、2023~24年の冬に流行したオミクロン株の亜系統JN.1の子孫株であるKP.3、LB.1、KP.2.3だ。オミクロン株対応1価ワクチン(XBB.1)は効きにくいと考えられている。厚労省は、今秋以降の定期接種にJN.1対応ワクチンを採用する方針を決めている。 これも時宜を得た対応だが、このワクチンが投入されるまで、オミクロン株対応1価ワクチン(XBB.1)の接種費用を、なぜ助成しないのだろうか。患者の選択肢を増やすことになるはずだ。自己負担にすれば、接種できる人は限られる。これでいいのだろうか。 コロナは、現在も国民の生命に直結する重大な問題だ。その死者数は、インフルエンザや熱中症とは比べものにならない。ワクチンによって重症化や死亡が予防できるのだから、今夏、接種費用の助成を再開すべきである。
上昌広