メタンガス爆発の万博会場と同じ“ごみ埋立地”だが…東京・若洲ゴルフ場が無事故を続けてこられた理由【小川朗 ゴルフ現場主義】
地中の硫化水素やメタンガスを「放散管」で逃がしている
2025年大阪・関西万博の開幕を来年4月に控えた人工島・夢洲(ゆめしま/大阪市此花区)の会場予定地で今年の3月28日に起きたガス爆発事故は、けが人こそ出なかったものの、各方面に衝撃を与えました。内外から2800万人を超える集客を見込む万博会場の一部で、メタンガスとみられる可燃性ガスが発生していることが広く知られることとなったからです。 【写真】思った以上に高い! これが若洲の安全を守る「放散管」です 一方、同じような埋め立て地でありながらメタンガスの発生対策を講じ、現時点で確認できる平成18(2006)年度以降、18年にわたりガスによる事故が起きていない施設が東京にあります。「若洲(わかす)ゴルフリンクス」(東京都江東区)がそれです。東京で起きていない事故がなぜ夢洲では起きたのでしょうか。現場の意見を聞きました。 ※ ※ ※
事故は3月28日午前10時55分頃、「グリーンワールド」工区のトイレ1階部分で溶接作業中に発生した火花がガスに引火して爆発し、床が破損したというものでした。 この工区は廃棄物処分場の埋め立て地で、店舗が入る営業施設などの建設が予定されていますが、すでに昨年11月の参院予算委員会でも福島瑞穂議員(社民党)にメタンガスの発生に伴う危険性を指摘されていました。 これを受けて自見英子万博担当相は「大阪市が廃棄物の処理及び清掃に関する法律に関連する省令に基づき配管施設を設置し、また発生しているガスを大気放散していると聞いてございまして、万博の開催時に危険はないと考えているところでございます」と答えたことが、各マスコミに報じられていました。(※参考=第212回国会 参議院 予算委員会 第6号 令和5年11月29日 国会会議録検索システム(ndl.go.jp)) 自見大臣の発言にもある「ガスを大気放散」する管は「放散管」と呼ばれています。今回の事故現場にも約80本の放散管が埋められていたと言います。実は同じような生い立ちを持つ東京の「若洲ゴルフリンクス(以下若洲GL)」にも、87本(平成13=2001年時点)の放散管が、天を突きあげるように伸びています。 この放散管を設置した東京都環境局の関係者によれば、若洲GLは旧15号埋め立て地に昭和40(1965)年から10年間にわたり、東京23区の家庭から出た生ごみ1844万トンが集積され、現在の東京都庁の建設で出た客土とごみをサンドイッチ方式で埋め立てていった埋め立て地の上にあります。ここに長さ30メートルの鋼管を埋め込み、地上に1~2メートル程度突き出し、地中に滞留している硫化水素やメタンガスを空中に放散させているのが「放散管」です。なお、放散管はゴルフ場整備時に継ぎ足され、現在では高さ3~4メートルにもなっています。 通常よりもはるかに軟弱な地盤だけに、2494.91平米もある巨大なクラブハウスの下に50メートル程度の基礎杭を88カ所に打ち込むことで沈下を防いでいます。その一方で造成当初フラットだったゴルフ場は、場所によっては地下のメタンガスが放出されたことにより、最大で2メートルもの地盤沈下が起きているといいます。その結果、コースのアンジュレーションが強調されるという副産物も生まれました。ちなみに現在、コース内で最も高いところは、標高18.3メートルあるとのことです。