メタンガス爆発の万博会場と同じ“ごみ埋立地”だが…東京・若洲ゴルフ場が無事故を続けてこられた理由【小川朗 ゴルフ現場主義】
オープン時はゴルフ場内を全面禁煙としていた
それだけのメタンガスが放出されていたため、若洲GLのオープン当初に筆者がプレーした際は、ゴルフ場内が全面禁煙となっていました。それはもちろん、今回夢洲で起きたようなアクシデントを回避するためにしたものと思われます。若洲GLはこれまで、記録が残る18年間にわたり無事故を更新中。現在は所定の場所であれば喫煙も可能になっています。実は生ごみの中から放出されているのは、メタンガスばかりではないのです。人体に有害で引火性のある硫化水素も、地中から放出されています。 若洲GLの関係者は「硫化水素は引火性で、芝の根に悪影響を与えるガスもあります。芝枯れなどが発生した箇所でガスの影響が疑われる場合は、芝を剥ぎ土中のガス調査を行っています」としたうえで、こう続けました。「そこで硫化水素が検出され、芝生の状態が悪いエリアは、芝を剥ぎ、定期的に張り替えを行っています」。 硫化水素はゴルフ場にとってかなりの難敵であるわけです。それだけに「硫化水素は検出されても土中なので、引火の危険性は低いと思いますが、芝の育成に影響があると思われるエリアは定期的に土中のガス濃度を計測しています」(若洲GL関係者)。1990年の開場から34年が経過しても常にゴルフ場の状態を観察し続け、わずかな変化が見つかれば対策をいち早く講じ、アクシデントを未然に防いできたのです。 2025年日本国際博覧会協会の関係者も、今回の事故を受けて次のように語っています。 「まず、(作業)手順の見直しを行っております。作業のときに、今までガスの溜まる恐れのある箇所として埋め立てのガス抜き管周りでの測定というのは常に見直ししていたんですけども、(今後)屋内作業に関してはその他大量の恐れがあるような箇所、狭くなっていてガスが溜まるという恐れがあるところ、ピット内、天井内空間、天井面付近等、こういったところに関しても濃度の測定を徹底します。自然換気に加えてガスの濃度が一定以上確認された場合は、機械換気等によって換気を迅速にを行って、基準値未満であることを徹底してから作業を開始することとします。専門家の方の意見もお伺いして、これらを再発防止策とさせていただいております」 目に見えないメタンガスや硫化水素の滞留をいかにして発見し、事故を未然に防ぐのか。内外から2800万人を超える集客を見込む万博会場で、イベント期間中に事故が起きれば開催の是非にまで議論が発展することは間違いありません。急ピッチに準備が進む中で、どう安心・安全を担保していくのか。厳しい目が大阪の万博会場に注がれています。 取材・文/小川朗 日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
小川 朗(日本ゴルフジャーナリスト協会会長)