<甲子園交流試合・2020センバツ32校>天国に届け「頑張る夏」 明徳義塾・奥野選手、春に祖母が死去
兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で10日開幕する「2020年甲子園高校野球交流試合」(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援)。大会第1日第2試合に登場する明徳義塾(高知)の奥野翔琉(かける)選手(3年)は夏の甲子園中止決定直前に祖母の美智子さんを72歳で亡くした。「夏に頑張れ」。祖母が遺(のこ)してくれた言葉を胸に、ある決意を持って試合に臨む。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 19年夏の甲子園では5番で先発出場し、2試合でヒットを放った。そんな孫の姿は美智子さんにとって誇りだった。自分のことのように喜び、奥野選手を取り上げた新聞記事は仏壇に飾り、近所の人にも見せて回った。 冬に入り、「長打を打てるようになったらプロを目指せる。体作りを頑張ってみろ」と馬淵史郎監督(64)ら指導陣から助言を受けた。「足を生かしたプレーならプロで生きていけるんじゃないか」と思い始め、冬場は打撃力向上のためスイングスピードを上げようと上半身を鍛えた。 手応えを感じ始めた矢先、センバツが中止になった。高知県大会3位の逆境からつかみ取った出場権。大会への思いは強く、涙が止まらなかった。意気消沈して京都の実家に帰った際、美智子さんがかけてくれた言葉が「夏に頑張れ」だった。気持ちが前を向き、夏に向けて踏み出せた。 夏の甲子園も中止となったが、ある程度想定されたのでショックは小さかった。目指すはプロ。モチベーションも維持して練習に励んできた。そんな中、県の独自大会とセンバツ交流試合の開催が決まった。亡き祖母の言葉に応える舞台は整った。 県の独自大会では順調に決勝まで勝ち上がり、準々決勝では4打数3安打2打点と活躍し、盗塁も記録した。決勝は高知に2―3と惜敗したが、試合後には「打撃にはスランプがあるけど足にはない。自分の一番の売りの足をアピールできるようにしたい」と気持ちを切り替えた。スカウトも観戦できることになった交流試合。10日の試合では「一生懸命やっているところを天国から見てもらいたい。そして絶対プロになる」と祖母に活躍を誓う。【北村栞、写真も】