ジェームズ・キャメロン監督、原爆がテーマの新作に着手 広島・長崎で「二重被ばく」した男性の実話を軸に構想
ハリウッドの巨匠ジェームズ・キャメロン監督が、原爆をテーマにした新作映画「ラスト・トレイン・フロム・ヒロシマ(原題)」に着手することが明らかになったと、米Deadlineが報じている。本作は、2009年公開の「アバター」以来の非「アバター」作品となる可能性がある。 キャメロン監督はこのほど、チャールズ・ペレグリーノの新刊書「ゴースト・オブ・ヒロシマ(原題)」と2015年発売の「ラスト・トレイン・フロム・ヒロシマ(原題)」の映像化権を取得。これらの著作をもとに、広島と長崎で原爆を生き延びた日本人男性の実話を中心に据えた映画の製作を構想しているという。 「核戦争の恐怖は、8歳の時にキューバ危機を目の当たりにして以来、私の心に刻まれています」とキャメロン監督は米Deadlineにコメント。「この主題について映画を作りたいと長年考えてきましたが、どのようにアプローチすべきか苦心していました」 映画の中心となるのは、「二重被ばく者」として知られる山口彊(やまぐち・つとむ)さんの体験だ。山口さんは1945年8月6日、出張先の広島で被ばく。その後長崎に戻り、8月9日に再び被ばくする経験をした。キャメロン監督は2009年12月、病床にあった山口さんを訪問。その際、山口さんは「私の役目は終わった。後はあなたに託したい」と英語で語ったという(山口さんは10年1月4日に死去)。 本作は、クリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」への回答となる可能性がある。「オッペンハイマー」が原爆開発者に焦点を当てる一方で、被ばく者の視点を描いていないという批判があった。キャメロン監督の新作は、まさにその空白を埋める作品となることが期待される。 「タイタニック」で悲劇的な史実を壮大なスケールで描き、アカデミー賞11冠に輝いたキャメロン監督だけに、今回も、最先端の視覚効果を駆使しながら、原爆の悲惨さと平和の尊さを世界に伝える作品になると期待が高まっている。 「ゴースト・オブ・ヒロシマ(原題)」は2025年8月、広島原爆投下から80年に合わせて出版される予定だ。映画の製作スケジュールや公開時期については明らかにされていないが、「アバター」シリーズの製作の合間を縫って進められる可能性がある。