父の遺産で優雅に暮らす90歳母…転倒して入院、車いす生活に→還暦過ぎの4人の子ども「引き取りはムリ」「相続が不安」の切実理由
母親所有のマンションは、価値の異なる3室、相続人は4人…
母親の主治医の判断では、退院しても自宅へ戻るのは難しく、万一戻れた場合も、車椅子で暮らすことになるため、お風呂やトイレのリフォームが必須とのこと。 「それなら、介護つきの老人ホームが安心です。その場合、将来の相続の準備をどうしたらいいのでしょうか?」 鈴木さんの母親が所有する不動産は、都心部の自宅マンションと、家賃収入を得ている区分の賃貸マンション2室の、合計3室です。自宅は、大手ディベロッパーが建設したブランドマンションで、父親が買った当時より1.3倍ほど値上がりしており、賃貸しているマンションの数倍の価値があります。現預金もありますが、不動産の価格の不均衡を埋めるほどではありません。この資産構成のままでは、4人いる子どもたちに均等に分割することはできません。 「きょうだいのだれかが母を引き取るなら、母のマンションを相続すればいいと思っています。しかし、4人とも事情がありまして…。私は夫の90代の両親と同居して介護していますし、妹もほぼ同じ状況です。兄と弟は、自分や子どもの健康に問題があって大変なのです。90歳の母が、あと何年生きるわけでもないと思いますが、それでも、本当に無理でして…」 「母には申し訳ないですが、みんな自分の病気や同居家族の問題で手いっぱいで〈相続を考えると、本当に面倒…〉と、きょうだいでため息をついています」
「空き家のまま維持」は、ぜひとも避けたい
また、自宅マンションは管理費と修繕積立金で、毎月6万円程度の費用がかかります。母親が老人ホームに入所した場合、これらの費用と固定資産税の合計100万円の費用をどうするのかという問題もあります。賃貸しているマンションの収入がありますが、母親の老人ホームの費用もあり負担は大きく、空き家のまま維持し続けるのは、ぜひとも避けたいところです。 自宅マンション内の母親の荷物を整理し、リフォームして賃貸に出すという選択肢もありますが、500万円を軽く超える出費となるうえ、将来の遺産分割を考えた場合、現実的ではありません。 筆者は、自宅を売却して2室のコンパクトな賃貸物件に買い替え、将来の相続に備えてはどうかとアドバイスしました。 近年では、立地のよいマンションの場合、新築時より価格が上昇するケースがしばしば見られます。このような状況がいつまで続くかはわかりませんが、分譲マンションの場合、立地や間取りを慎重に選べば、将来的に価値の上がる物件を購入することもできそうです。