最高の野球漫画実写化は…? 名作野球コミック原作の日本映画(1)衝撃の禁じ手!? もはやカルト作…禁断の実写化
『巨人の星』、『MAJOR』、『ベー革』…。昭和、平成、令和と幾世代にも渡って描き継がれ、コミックファンの心を掴んでいる野球漫画の名作たち。今回は、そんな名作コミックの実写映画化作品を5本セレクト。原作の世界観を巧みに再現した佳作から、ツッコミどころ盛り沢山の迷作まで、玉石混淆のラインナップをご紹介する。今回は第1回。
『ドカベン』(1977)
監督:鈴木則文 原作:水島新司 脚本:掛礼昌裕 出演者:橋本三智弘、高品正弘、永島敏行、川谷拓三、マッハ文朱 【作品内容】 熊のような立派な体格と屈託のない笑みが特徴的な山田太郎は、妹・サチ子と祖父と3人暮らし。明訓高校に転入して早々、喧嘩っ早いことで有名な問題児・岩鬼と対立。2人の喧嘩を見かねた野球部主将の長島は、野球で勝負することを提案する。長島の投げる球に手も足も出ず、三振を喫する山田と岩鬼だったが、長島は山田のスイングを見て、底知れぬ才能を見出す。その後、山田は長島の誘いを断り柔道部に入るも、関東大会の決勝で惜敗。その頃、野球部は部員全員が事故に遭い存続の危機に陥る。見かねた山田、岩鬼、殿馬の3人は野球部に入部し、甲子園目指して練習に励むのだが…。 原作は『週刊少年チャンピオン』にて、1972年から1981年まで連載された国民的野球漫画。監督を務めたのは、菅原文太主演の『トラック野郎』シリーズで知られる、東映のエース監督・鈴木則文。原作漫画は長いブランクを経た1995年に続編となる「プロ野球編」が開始。その後、リニューアルを繰り返し、2018年まで続く長寿漫画となった。 【注目ポイント】 『ドカベン』以前は、梶原一騎原作の『巨人の星』(1966~1971)が野球漫画の頂点に君臨していたが、現実離れした試合描写とスポ根を極めたような作風は当時から賛否両論。一方、『巨人の星』終了の1年後に連載がスタートした『ドカベン』は、打者と捕手の心理戦など、リアルな試合描写を盛り込み、本格派の野球漫画として広く支持された。 1976年当時、世間は漫画ブームに沸いており、漫画『ドカベン』の実写化は東映の目玉企画としてスタート。山田太郎、岩鬼正美、長島徹というメインの役どころはプロの役者ではなく、一般オーディションによって選出するという、大胆な方法が採られた。 映画冒頭には、漫画『ドカベン』を買い求める少年たちが現れ、看板に書かれたドカベンのイラストが飛び出し、実写版で山田を演じる橋本三智弘が登場する。トリック撮影を使った手の込んだオープニングから、クライマックスに至るまで、魅力的な登場人物の躍動感あふれるアクションが繰り広げられる。 山田役の橋本三智弘は役者未経験であるのに加え、撮影当時16歳。一方、同級生の殿馬を演じるのは、東映所属の俳優であり、当時30代中盤の川谷拓三。あまりにも無理のあるキャスティングだが、劇画調の演出も相まって、不思議な魅力を感じさせる。また、岩鬼に扮した高品正広の演技は、原作ファンをも納得させるハマりっぷりで魅了する。 気になる内容だが、原作に習い、物語の大部分は山田が柔道部で奮闘する様子が描かれる。野球シーンといえば、後半の10分ほどに過ぎず、試合ではなく練習模様が描かれるのみ。野球映画として観ると肩透かしをくらうかもしれないが、名作漫画の実写化としては一見の価値のある作品となっている。
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