創業半世紀サンミュージック社長語る 次の時代の芸能プロダクションとは
スターとしてアイドル育成した80年代 今はファンが選ぶ時代に
次に登場するのが早見優。相澤が本格的にかかわった最初のタレントでハワイでスカウトした。 「優は太陽の申し子みたいな明るさで、『ザ・ベストテン』や『ザ・トップテン』などの音楽番組によく出たし、雑誌も『明星』、『BOMB(ボム)』はじめたくさん。82年組は小泉今日子、石川秀美、中森明菜、堀ちえみ、松本伊代。男ではシブがき隊と、豊作でね」 「少女A」で一歩抜けた感のある明菜を追うように、早見もデビュー翌年にはコカ・コーラとタイアップしたCM曲『夏色のナンシー』でブレーク。その後、岡田有希子、“のりピー”こと酒井法子もデビューして、アイドル黄金期は平成を迎えるあたりまで続く。 「80年代はわれわれがスターとして作り込んで売り出す。育成して、表に出し、賞レースを狙う。それで売れた子だけがアイドルになれたんですが、今はファンが選ぶ時代になりましたね。グループの中からチョイスした子を応援する。アイドルという言葉の意味も幅が広がり、スポーツ選手もアイドルだったり。意味も立ち位置も変わってきました」 そんな平成の世にサンミュージックを支えたのが、お笑いをはじめとするバラエティー部門だ。 「ウチにはアイドルと役者はいてもお笑い芸人がいなかった。それで、お笑いスクールで講師をしていたブッチャーブラザーズにプロデューサーとして来てもらい、お笑いでまずはライブをやりましょう、と。固定客もできるし、お笑いをやりたい人たちも集まってくると指導を受け、お笑いセクションを立ち上げたのです」
ネットが変えるプロダクションの在り方
今年、平成が終わり、新たな時代が幕を開ける。これから芸能界は、どう変わっていくのか。 「コミュニケーションの変化は大きいです。テレビを前に一家団らんのあった昭和から、情報が個人化されスマホで得るようになった平成へ、タレントの応援の仕方も変わってきました。何が売れるか、ますますわからない。歌手、俳優、お笑い芸人という3種だけでなく、文化人的にしゃべれる人、1つの分野に特化している人、ネットからもいろんな人が出てきています。年代や趣味の部分でセグメント化されてくる中で、受ける子もいますね」 You Tuberからのスカウトもあり得る時代になった。ネットの存在はタレントや芸能プロダクションの在り方も変えつつある。 「タレントを育成して出せばいい、という時代ではなくなってきています。You Tuberも、僕らから見てクリエイター的な力のある人を見かけるので、そういう人と組むことも始めています。ゲームもeスポーツなどはアジア的にも広がっていて、eスポーツの選手を抑えるのは必須だと思うんです。すでにいるアイドルの子やお笑いの子でゲームのチームを作っても面白い。海外との権利の問題などもこれまで以上に出てくると思います」 そんな中で、プロダクションの立ち位置はどうなっていくのだろう。 「総合プロダクションにもタイプがあって、たとえばアミューズさん、ホリプロさん、ワタナベエンターテインメントさんなどは大きなデパート。ウチはスーパーかドン・キホーテか。そこからユニクロを目指そう、安いけど品質が良いよ、みたいな。これからは多角的に物事を観て、オタク的な要素がある専門分野に特化した人材がマネージメント側にも必要です。専門的なものを専門的な目線で観る。ソフトという意味ではドラマにしてもアニメにしてもなんにしても、中で演じる人の需要はなくならない。プロダクションの使命はますます大きくなるでしょう」 (取材・文・撮影:志和浩司)