「馬鹿にしないで」被爆体験者の医療費助成が被爆者と同等に、でも〈被爆者ではない〉
国が定める被爆地域の外で原爆の放射性微粒子を浴び被ばくしたと訴えている「被爆体験者」に対し、国が被爆者と同等の医療費助成を行う事業が12月から始まりました。しかし、当事者への十分な説明はなく、周知が進まない中でのスタートとなり、混乱も生じています。 【写真を見る】被爆体験者支援事業 制度変更のたびに変わる手帳 爆心地から12キロ圏内の被爆未指定地域(黄色の地域)にいた人たちを指す「被爆体験者」 放射能の影響はないとされている一方、被爆体験による精神的な影響の可能性が認められています。 2002年に始まった支援事業で国は当初、被爆者と同じ「ピンク色」の手帳を交付しがんやケガ、風邪以外の疾病に医療費を助成していました。 しかし2005年から対象疾病を絞り手帳は「黄緑色」に。 昨年度からは逆に対象を拡大し「オレンジ」に。 そして今回、医療費の助成をさらに拡大する新制度をつくり新たに「すみれ色」の手帳を交付するとしています。 高齢になった被爆体験者たちには喜びと同時に混乱も広がっています。 ■被爆体験者が通う医療機関では混乱も… 「…これさ、ここで書いたら診断書代が一万円かかるとさね」 被爆体験者・松本アヤメさんと医療機関のスタッフや医師 「気になって…」「みんな不安やもんね」「書類はまだよかとですか?大丈夫あせらなくても。心配かろ?はい。心配かけんきょうは整形には行かんで…」 被爆体験者・松本アヤメさん「いろいろかかってるでしょ病院に。(被爆者と)認めてほしい」 岸田総理(2024年8月当時)「合理的に解決できるよう指示をいたします」 今年の夏、岸田前総理が指示した被爆体験者問題の「合理的解決」その具体策が今回の新制度です。医療費の助成を被爆者と同等とし精神科の受診要件も撤廃。しかしあくまで「被爆者」ではないとしたままです。 それにもかかわらず、受給要件は被爆者の健康管理手当と同じ「11疾病の罹患」としており、矛盾をはらんだ制度となっています。 申請には自分で「診断書」をとる必要がありますが、案内が届いたのは先月下旬、説明会もなく十分な理解が広がらないまま新制度がスタートしています。