「最重点項目」トクリュウ対策、検察も本腰 警察との「温度差」乗り越えられるか
「ルフィ」などと名乗る広域強盗事件をきっかけに注目を集め、社会の脅威となっている「匿名・流動型犯罪グループ」(トクリュウ)。壊滅に向け、警察だけでなく検察も本腰を入れ始めている。トップの畝本直美検事総長も就任会見で対策強化を明言したが、最前線で捜査に当たる警察内部からは「温度差がある」との声も漏れる。新型の犯罪組織を一掃するため、警察捜査を指揮する検察の本気度が問われている。 【表でみる】SNSなどでの闇バイト募集の構図 ■首相も言及 「闇バイトによる強盗、詐欺を許してはならない」「事件の主体となっている匿名・流動型犯罪グループの検挙を徹底するための取り組みを一層推進する」 石破茂首相は11月29日、衆院本会議の所信表明演説で、こう宣言した。組織犯罪対策について首相が言及するのは、極めて異例だ。 トクリュウは、相次ぐ暴力団対策法の改正と全国で整備された暴力団排除条例により既存の暴力団が衰退する中、SNS(交流サイト)などのIT技術の発展による「犯罪の匿名化」を背景に誕生した。 親分-子分など「疑似家族」的な関係を構築し、組織に忠誠を誓わせる暴力団とは異なり、帰属意識が薄く離合集散を繰り返す新手の犯罪組織として急激に台頭。SNSで募集する「闇バイト」による強盗事件などが、典型的な犯罪とされる。 ある法務省関係者は「公の場で首相が発言した以上、トクリュウ対策は国家の方針。検察にとって最重点項目になったと言っていい」と打ち明ける。 ■幹部の決意 首相の発言以前から、今年に入り法務・検察幹部も相次いでトクリュウ対策の強化を「発信」し始めていた。 畝本検事総長は、7月9日の就任会見で「犯罪の組織化や匿名化が進んでおり、立証がますます困難になっている」と指摘。「組織全体として捜査能力の向上に取り組む」とし、トクリュウ対策の強化を明言した。 同月、組織犯罪を所管する最高検公安部長から九州8県を管内に持つ福岡高検検事長に転じた松本裕氏も、着任会見でトクリュウについて「各県、国内にとどまらず、警察との協力はもちろん海外に対しての捜査共助なども積極的に展開する姿勢が必要」とした。 11月に就任した鈴木馨祐法相も、検察内の全国会議で「トクリュウ」に言及したという。