「最重点項目」トクリュウ対策、検察も本腰 警察との「温度差」乗り越えられるか
■不起訴のケースも
一方、ある警察幹部は、トクリュウ対策について「検察とは温度差がある」と不満げに語る。
トクリュウのような組織犯罪では、実行役や周辺にいるサポート役などは、犯行の全容を知らされていないことも多い。せっかく警察が逮捕しても、証拠が足りず「公判が維持できない(有罪にできない)」と検察が判断し、不起訴となることが往々にしてある。
広島市西区で5月に発生したトクリュウによるとみられる強盗事件で、県警は18~19歳の男5人について、実行犯の犯行を幇助(ほうじょ)した疑いで書類送検。だが広島地検は最終的に不起訴処分とした。
警察幹部は「検察に『十分な証拠がない』と判断させた捜査には反省点もある」とした上で、「検察と警察は、治安を担う車の両輪。脅威を増すトクリュウに対しては、われわれ以上に厳しい姿勢で臨んでほしい」と話す。
11月末には、空き巣専門の窃盗団やSNSを悪用した覚醒剤密売グループのリーダーがそれぞれ警視庁と福井県警に相次いで逮捕されるなど、警察の捜査はトクリュウの「上層」にも及ぶようになってきている。
警察幹部は「首謀者たちが逮捕されても、あっさりと釈放される事態は絶対に避けたい。検察と警察の連携強化はまさに時代の要請といえる」と力を込める。
■カギは「司法取引」
トクリュウ対策で注目されるのが、他人の犯罪を明らかにした見返りに刑罰を軽くする「日本版司法取引」(協議・合意制度)の活用だ。
平成30年6月から導入されたこの制度の対象となるのは、振り込め詐欺、薬物密売などの組織犯罪。容疑者や被告が供述したり、証拠を提供したりして共犯者らの犯罪を明らかにした場合、検察官が起訴を見送ったり求刑を軽くしたりする。
検察庁勤務の経験がある弁護士は「これまでは自白させることが捜査の中心だったが、自白を得ようとするあまり、強引な取り調べで冤罪(えんざい)を生む問題があった」と指摘。
その上で「組織犯罪の悪しきトレンドと化したトクリュウの壊滅に向け、合意制度という切り札を手にした検察の本気度が問われている」と、制度の活用に期待を寄せた。