ピーク時の4分の1に…「ハンター不足」このままでは「クマ」と戦えない!どうする猟友会の高齢化問題
警察官は銃の使用範囲が定められているため野生動物に向けて発砲できないが、佐藤教授は「検討の余地があるのではないか」と言う。 「市街地での猟銃発砲は、鳥獣保護管理法で原則禁止されています。ハンターが市街地に出没したクマに発砲できるのは、警察官職務執行法4条に基づいて警察官が人の命に関わる差し迫った状況だと判断して命令を出した場合だけです。 でも、それはちょっとおかしな話で。時給や日給で非常勤雇用されているハンターが市街地で銃を使用できるようにする以前に、警察官が責任を持って役割を分担するべきではないでしょうか。それが無理なら、鳥獣行政担当者や消防官、自衛隊などの別組織がその役割を担えるようにしていくべきです」 ところで、環境省は10日に閣議決定された’23年度補正予算案に、クマ対策の事業費7300万円を計上した。生活圏に出没する問題個体の調査、捕獲などの緊急対策を行うという。 環境省はすでに先月24日、クマの市街地出没が多い北海道と北東北3県を対象に緊急支援に乗り出すと発表。それを受けて北海道は、ハンターへの報酬や出動経費に対する支援制度の創設を求めていた。 「国が都道府県のクマ対策を支援するにしても、単年度で終わるのではあまり意味がありません。やはり、継続的な支援が必要です。 北海道ではクマ問題が道議会でもかなり議論され、クマの管理にしっかり取り組んでいく方向に進み始めています。国の支援のあるなしにかかわらず、道は道として長期的な視野に立って人材や予算を配分していってほしいです」 北海道が進めようとしているクマの管理とは。 「道は昨年3月に改訂した『ヒグマ管理計画』で捕獲数の上限を決め、個体数を大きく減らさない中で問題を起こす個体を捕獲し、軋轢を減らそうとしてきました。しかし、実際の捕獲数は上限を下回っています。結果として、地域によってはクマが増え、軋轢も増えている。 そこで専門家が今、軋轢が発生する人里の周辺地域に対して捕獲目標数を設定することを検討しています。人との軋轢を減らすためには、人里周辺のクマの頭数を積極的に管理していく方向にシフトしていかざるを得ない。 一方、先進的な取り組みをしている知床半島や札幌市では、問題個体の特定と数の把握がかなりできている。そうしたクマ対策が進んでいる自治体や地域のやり方は、少なからず参考になるのではないでしょうか」 クマとの戦いは、まだまだ予断を許さない状況であることは間違いなさそうだ。 佐藤喜和(さとう・よしかず)酪農学園大学教授。1971年、東京都生まれ。北海道大学農学部時代に「北大ヒグマ研究グループ」に所属。現在、北海道ヒグマ保護管理検討会委員、知床世界自然遺産地域科学委員会委員・ヒグマワーキンググループ座長などを務める。著書に『アーバン・ベア となりのヒグマと向き合う』(東京大学出版会)。 取材・文:斉藤さゆり
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