トップダウンの職場ほど「イノベーションが生まれにくい」根拠
ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。 こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。 今回、紹介するのは『まず、ちゃんと聴く。コミュニケーションの質が変わる「聴く」と「伝える」の黄金比』(櫻井将、日本能率協会マネジメントセンター)。この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。
伝えるではなく「聴く」
伝える方法についての本は多くあります。特にホウレンソウやプレゼンテーションは、社会人になると誰もが直面するテーマで、私自身も様々な本を読んで少しでもうまくなれるようになれたらと思った一人です。 本書の切り込む角度は違います。テーマは「聴く」です。聴くという漢字を使ったときに、音楽を聴くことを想像するかもしれませんが、ここでは日常や仕事上の対話でちゃんと聴くシーンをイメージして使われています。 自分が話している時間は一日の中でごく一部であるのに対して、耳を働かせている時間はずっと多いはずです。それでも本書を読み進めると、ちゃんと聴くことができていた時間はわずかだったと気づくことでしょう。 話がしやすくて、熱心に聴いてくれるので、ついつい話しかけてしまう人が周りにも思い浮かびます。その聴く能力は、感性に基づくものに感じるかもしれませんが、本書を読めばそれは理性と感受性を動員すれば誰にでも行えて、その効果は大きいことが理解できるでしょう。 近年主流になりつつある会社内での定期的な1on1や、キャリアの相談、日常の会話に至るまで、聴く力を発揮できるシーンは限りがありません。本書はその入り口に立つ人にとって、救いの書になることでしょう。
withジャッジメントとwithoutジャッジメント
「聴く」とはどのようなことを指すのでしょうか。本書では「自分の解釈を入れることなく、意識的に耳を傾ける行為」と定義されています。言い換えると、「withoutジャッジメントで、意識的に耳を傾ける行為」となります。 それに当てはまらない行為は「聞く」と表現されています。一定の判断や評価をしながら相手の話を聞く、withジャッジメントで耳を傾ける行為となります。ほとんどの管理職の方は、知らず知らず「聞く」と「伝える」に終始してしまい、「聴く」がおろそかになってしまうことに注意が必要です。 今の世の中の環境から、「聴く」を大切に扱いたいシーンが増えています。1on1は主にメンバーと担当のマネジャー間で行われるものと言え、そこでは相手に寄り添うために「聴く」あり方が重要になります。会社上の役割には違いがあっても、人と人がフラットな関係で理解を深める時間として位置付けたいものです。 イノベーションは多様な視点を持つことで実現しやすくなると言われています。上位下達よりはフラットで、一つの視点よりは多くの視点が混ざり合ったところで、新しいアイデアは芽を出しやすくなります。つまり、今求められるイノベーションを促せる人材は、「聴く」ことが巧みな人である可能性が高いわけです。 なお、聴くことも決して万能ではありません。本書のタイトルにあるように、「まず、ちゃんと聴く」スタンスで会話に臨み、適切なタイミングでは伝えることも大切になります。