FRBの予測手法は時流捉えず-バーナンキ元議長が新たな方法提唱
(ブルームバーグ): 米連邦準備制度による予測や公的な発信は、とりわけ経済の予想外の展開が続く状況にあって、限界が一段と鮮明になっている。
問題は予測そのものではない。たびたび予測は外れているが、むしろ、年内3回の利下げ見通しといった中心的予測に重点を置くことが問題だ。米経済が依然として新型コロナウイルス禍の余波で揺れる中、中心的予測では起こり得る結果の範囲について多くを伝えられない。インフレの新たな波が押し寄せ、先月公表された金利見通しは今や時流を捉えていないように見受けられる。
これに変わる手法として勢いづき始めているのはシナリオ分析だ。基本シナリオに対する信頼できるリスクの範囲と、中央銀行の対応方法を強調するもので、経済の不確実性が高いときに特に有効な方策だ。
バーナンキ元連邦準備制度理事会(FRB)議長の最高顧問を務めた米ダートマス大学のアンドルー・レビン教授は「米金融当局は早急にシナリオ分析を公的な発信に取り入れる必要がある」と述べ、これは「金融政策のストレステスト」だと指摘した。
バーナンキ氏自身は現在、大西洋の向こう側でも同様の主張を行っている。今月発表されたイングランド銀行(英中銀)向けの報告書では、こうしたアプローチの採用を提言した。スウェーデン中銀はすでに代替の政策の道筋を考えるためにシナリオ分析を使っている。
バーナンキ氏は英中銀の予測手法を評価した際、中心シナリオと代替シナリオの両方を公表することで「国民は反応関数について一層鋭く推論でき、将来の政策行動をよりよく予測できる」と論じた。
米経済の活況は金融当局者を驚かせ続けている。連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の予測中央値では、2024年経済成長率見通しは3月に昨年12月から0.7ポイント上方修正され、年内の利下げ回数は3回との見方が示された。
だが、インフレ率のデータが予想を上回ったため、少なくとも金融市場においては、FOMCの予測はすぐに陳腐化した。投資家は年内利下げ回数の予想を減らし、オプション市場では利下げが1回以下になる確率は五分五分との声が聞かれる。