イスラエルの爆撃でヒズボラ幹部が死亡、ロケット弾などで報復と
レバノンの武装組織ヒズボラは3日、同国南部でイスラエル軍の空爆があり、ヒズボラの幹部が殺害されたと発表した。イランが支援するヒズボラはこれに対し、イスラエルにロケット弾の集中砲火で報復した。 殺害されたのは、ヒズボラの上級幹部モハメド・ニマ・ナセル氏。ヒズボラとイスラエルの間では、ほぼ9カ月間にわたり国境を越えた武力衝突が続いており、幹部も狙われている。 この武力衝突が、全面戦争に拡大する懸念が高まっている。 ヒズボラは、「暗殺に対する報復の一環として」、イスラエルの軍事施設に100発のロケット弾とミサイルを発射したと述べた。イスラエル軍によると、複数の砲弾が、開けた場所に落下して火災を引き起こした。負傷者は報告されていない。 イスラエル軍によると、ナセル氏はレバノン南西部からロケット弾を発射する任務を負うヒズボラのアジズ部隊を指揮している。ナセル氏が「多数のテロ攻撃」を指揮していると、イスラエル軍は非難した。 また、6月にやはりイスラエル軍が殺害した、ヒズボラの別部隊の司令官タレブ・サミ・アブドゥラ氏と、ナセル氏は同格の立場だとも表現した。アブドゥラ司令官の殺害を受け、ヒズボラは1日に200発以上のロケット弾やミサイルをイスラエル北部に向けて発射した。 それ以来、緊張緩和に向けた外交努力が活発化している。国連とアメリカは、イランやその他の同盟国を巻き込む戦争が、壊滅的な結果を起こしかねないと警告している。 昨年10月7日にイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとの戦争が始まってから、イスラエルとレバノンの国境ではほぼ毎日のように銃撃が交わされている。 ヒズボラは、ハマスを支援していると述べている。ハマスはイランの支援も得ている。ヒズボラとハマスはいずれも、イスラエルやイギリスなど複数の国からテロ組織に指定されている。 イスラエル当局はここ数週間、この外交交渉が失敗に終わった場合、北部国境の安全回復のため軍事力を行使すると繰り返し警告してきた。 ヨアヴ・ガラント国防相は3日、「我々はヒズボラに毎日激しく攻撃を仕掛けている。また、レバノンで必要な行動を起こす、あるいは強い立場から合意に達するために、万全の準備態勢を整えるつもりだ」と説明。「合意を望むが、現実が戦争を強いるなら、我々は戦い方を知っている」と述べた。 ヒズボラは兵器を多く備蓄しており、イスラエルの敵としてはハマスよりもはるかに強力だと、かねて見なされてきた。ヒズボラ側は、イスラエルとの全面戦争は望んでおらず、レバノン国内でガザ地区での停戦合意を尊重するとしている。 ヒズボラの副指導者シェイク・ナイム・カッセム氏は2日、AP通信の取材に対し、「イスラエルは、限定戦争、全面戦争、部分戦争など、自分たちが望むものを決めることができる」と述べた。 「だが、イスラエルが設定する上限や交戦規定の範囲内で、我々の対応や抵抗が行われるわけではないことを覚悟すべきだ」 これまでに、レバノンでは400人以上が死亡したと報告されており、その大半がヒズボラ戦闘員だという。イスラエル側では、25人が死亡し、そのほとんどが兵士だという。 一方、国境の両側の地域に住む何万人もの人々が、一連の衝突で避難を余儀なくされている。 (英語記事 Israeli strike kills senior Hezbollah commander in Lebanon)
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