恐ろしい…定年退職後の余命、30年以上ある場合も。これからの高齢者が「親の老後生活」をまねるのは、あまりに危険すぎるワケ【経済評論家が助言】
株価暴落リスクを恐れるなら、インフレリスクだって…
日本人高齢者のなかには、老後資金をすべて銀行預金で持っているという人も多いようです。そもそも日本人の遺伝子はリスクを嫌うようにできているから株価暴落が怖い、高齢者は若者より保守的になりやすい、ということもあるのでしょう。 バブルの頃までは「株に手を出す」などという言葉もありましたから、株式投資はバクチであって、真っ当な人間が手を出すものではない、と考えている高齢者も多いかもしれません。 投資を始めたことはあるけれど、バブル崩壊やリーマン・ショックで大損をして、二度と株式投資は行わない、と心に誓った人もいるでしょう。 しかし、株価暴落のリスクを恐れるのであれば、同様にインフレのリスクも恐れていただきたいものです。高齢者は石油ショック後の激しいインフレを経験しているのですから。
「年金の受取開始を待つ」という選択肢も
老後資金を何で運用するか、を考えるのと並んで、老後資金で生活することで公的年金の受け取り開始を遅らせる、という選択肢も要検討です。 公的年金は、どれだけ長生きしても最後まで払ってもらえますし、インフレが来れば原則としてその分だけ受取額が増えるので、老後資金の非常に頼もしい味方です。 公的年金は65歳から受け取るのが普通ですが、受取開始を75歳まで待つことができます。当然ながら、遅くに受け取り始めるほど毎月の受取額は増えます。たとえば70歳から受け取り始めると42%増えるので、老後の安心感が大いに高まるでしょう。 そこで、老後資金を使って生活し、年金の受取開始を遅らせるという選択肢も要検討です。インフレのリスクは株式投資等で軽減できますが、長生きのリスクに対応するのは容易ではありませんから。 筆者は、公的年金の受取を開始していません。老後資金を少しずつ取り崩しながら生活しています。幸い、定年後も経済評論家としての収入がわずかながら得られているので、もうしばらく受け取らずに待つつもりです。
「認知症」は、高齢者にとっても由々しき問題
老後資金が不足するリスクに加えて、認知症になったり倒れて意思表示ができなくなったりするリスクにも備える必要があるでしょう。預金が引き出せずに看病してもらえなかったり、葬式をしてもらえなかったりしたら悲しいですから。 ある程度の金額を子どもたちに贈与する、という選択肢は要検討です。贈与税には注意し、子どもたちが使ってしまうリスクがあるなら通帳を預かるなどの対策をしたうえで、「万が一のときは入院費用、介護費用、葬儀代等をこれで払ってくれ」と頼んでおくのです。 クレジットカードの家族カードを作っておくのもよいでしょう。万が一のときの入院費用等をカードで支払ってもらえばよいのです。 その他、家族信託を検討する、子ども達を金融機関に代理人として届けておく、等々の対策は様々だと思います。いちど、金融機関などに相談してみてはいかがでしょうか。 本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。 塚崎 公義 経済評論家
塚崎 公義