マンション住人は避難所に入れない…いつ襲われるかわからない大地震「マンション住民の備えと覚悟」
高層マンションにぜひ備えてほしいと山本氏が言うのは、ソリ。 「20階以上の部屋から、介助が必要な人を背負って階下に降ろすのは無理。そのようなときのために用意してほしいのが、災害現場向けの大型ソリです。介助者をこれに乗せて階段を滑らせるようにすれば下層階への避難誘導に便利です」 マンションではエレベーターの中に閉じ込められる危険性もある。 「エレベーターの中には組み立て式の簡易トイレを設置しておくことをおすすめします。組み立てておいて、中に懐中電灯や充電器、水や非常食、アルミ保温シートを入れて、使わないときはカバーをかけておく。用を足したくなったときは、アルミ保温シートをかぶればいいのです」 水や食料は基本的には個人で最低3日分を用意しておく。水は1日1人3ℓだから、3日分で9ℓ。それを人数分用意しておく。 「私はこれらを旅行や出張で使うスーツケースに入れておくことをおすすめしています。防災バッグを用意する必要はありません。スーツケースの中に水や食料、歯磨き、歯ブラシ、救急用品、衛生用品など日常で使うものを入れておいて、その中から使うようにローリングストックする。ふだんから非常時のことを考えながら生活すればいいのです」 ◆「長周期振動」で高層階は窓が割れ、室外に落下する危険も ’81年6月以降に建てられたマンションは震度6強~7程度なら倒壊しないとされているが、安心はできない。とくに高層階は長周期振動で大きく長く揺れることが知られている。 「建物が大きく揺れると家具が大きく動き、それによって窓ガラスが割れてしまうことも考えられます。高層階では風が強く、窓ガラスが割れることで家具が落下したり、家具につかまっていたら家具ごと落下する危険性もあります。強化ガラスを使っていたら割れないかもしれないけれど、建物がゆがんだことで窓枠ごと落ちる可能性もあります」 住居の中で比較的安全なのは玄関、バスルーム、トイレだと言われる。出入口を確保することも重要だ。揺れを感じたら、とくに高層階の住人は玄関などに避難するのがよさそうだ。 「防災はイマジネーションが大事です。日ごろから、どのようなことが起こるか考えておく。廊下にものがたくさん出ていたら通路が塞がれてしまうかもしれない。近くに川があったら堤防が決壊して地下の電気室が浸水してしまうかもしれない。そのときどうするか。日ごろから考えておかなければなりません」 いつどこで起こるかわからない地震。勤務中かもしれないし、移動中かもしれない。つねに「ここで起こったら」と考えるくせをつけてほしいと山本氏は言う。