トヨタ「センチュリー」も搭載した12気筒エンジンがなくなる!? かつてステイタスの象徴だった「V12」の黄金時代を振り返ります
失われてほしくはない、12気筒の息吹
こうして、1990年代から2000年代にかけて世界的活況を得ていた12気筒エンジンだが、ご存知のとおり現在では風前のともしび。その行く末を危機的なものとしている最大の理由は、2015年のCOP21「パリ協定」にて、温室効果ガス排出量を低減させることが全世界的目標として定められたことにある……、といわれている。 CO2削減が何よりも優先されるべき、との風潮が支配的になった影響を受けて、自動車用のパワーユニットも今世紀初頭以降の「ダウンサイジング」を経て、好むと好まざるにかかわらず電動化へのかじ取りが進められている。 この巨大なうねりの中、高級さや高性能のシンボルとしてスワンソングのごとき最盛期を迎えたV12/W12エンジンも、その大部分がハイブリッド機構つきのV8ないしは6気筒ターボに取って代わられ、今やごく一部の高級スーパーカーないしはハイパーカーのみに許された「最後の楽園」と化しているのだ。 1970年代までの状況に戻った……、といわれればたしかにそのとおりではあるものの、愛すべき「自動車」という乗り物からこのまま12気筒の息吹が失われてしまうのは、あまりにも寂しいことと感じられる。水素やバイオフューエル、あるいはそれらを燃料とする内燃機関の実用化に向けた研究・開発が進み、12気筒エンジンの血脈と美しいサウンドがこの先の世代にも受け継がれることを、いちエンスージアストとして切に願うのである。
武田公実(TAKEDA Hiromi)