サイゼリヤの「値上げしない」宣言には裏がある?消費者が手放しで喜べないワケ
サイゼリヤは24年2月期第2四半期の決算発表を行った。増収増益で、大きく利益を伸ばし、絶好調だ。また、物価高が続く中、同社が「値上げしない方針」を貫いていることも注目を集めている。ただ、私たちは、「価格据え置き」を手放しで喜んでいられない。どういうことか。(やさしいビジネススクール学長 中川功一) 【図】サイゼリヤが「価格据え置き」できるワケ ● 「値上げしない」方針を貫くサイゼリヤ 決算を見れば、サイゼリヤは外食産業の最優等生企業の一つと言っていいだろう。 2024年4月10日、同社は2023年9月~24年2月期の連結決算を発表したが、売上高は前年同期比25%増の1046億円、営業利益は約6.6倍の59億円、純利益は約4.3倍の26億円となった。 サイゼリヤと言えば、何と言ってもコストパフォーマンスの良さが有名だ。 安定した味、優れた品質の料理をたっぷりいただいて、ドリンクバーを使いながらゆったり過ごしても、客単価1000円もいかない。 同社の松谷秀治社長は決算発表会見で力強く、「値上げしない方針は変わっていない」と宣言した。まことに、有難い限りである。 だが、ここで一つの疑問が持ち上がってくる。 これだけの物価高・原料高の中で、なぜサイゼリヤは「価格据え置き」のまま、利益を上げることができているのだろうか。
● サイゼリヤが「価格据え置き」できるワケ サイゼリヤが、なぜ国内の販売価格を据え置くことができているのか。その理由は、同社の決算を見れば一目瞭然である。 24年2月期第2四半期までの業績をセグメント別に見ると、国内「サイゼリヤ」事業は売上高673億円と、3事業の中で売り上げが最も大きい。しかし、営業利益はわずか3400万円だ。売上高利益率は0.1%にも満たず、ほぼゼロ利益だと言っていい。 これに対して、アジア事業は売上高373億円に対し、営業利益は56億円。利益率は実に14.9%に達する(なお、豪州には生産工場だけがある。豪州の売り上げ額は日本事業とアジア事業に対しての出荷の分であり、「連結消去」としてその分は相殺処理されている)。 つまり、サイゼリヤは、企業としての利益をほぼ海外事業で稼いでいる。 支払いのため、従業員のため、顧客のため、設備更新のため、会社の経営には必要最低限の利益を担保する必要がある。サイゼリヤが国内で利益度外視のような事業体制が維持できているのは、海外事業で抜群に稼げているからこそ、なのだ。 ● 「単価アップ」が利益改善に最も効果的 ここから私たちが学ぶべきことは二つある。 第一は、価格アップができなければ、利益を十分に稼いでいくことは不可能なのだということ。 管理会計(企業を経営する上での社内向けの会計)の枠組みを用いるならば、会社の利益を改善する方法は、「売り上げアップ」か「費用ダウン」、もしくは「単品の利益を改善する」「組織の利益構造を改善する」のいずれか4つしかない。