都医師会、はしか流行とワクチン接種を解説「まずは接種歴の確認。心配な方は抗体検査を」
東京都医師会の定例記者会見にて、疾病対策を担当する小児科医の川上一恵理事が「麻しん(はしか)」について解説した。 【写真】追加接種は必要? 麻しんワクチンの接種状況の早見表と系統図 川上理事は、麻しんの症状について「麻しんウイルスに免疫のない人が感染すると、10~12日の潜伏期を経て発熱、鼻水、咳といった風邪症状が発生します。迅速検査の方法がないので、この時点では発熱患者さんにインフルエンザや新型コロナの検査をして、違う場合は自宅で様子を見てもらうことが多い」「38~39度前後の熱が2~3日続き、その間に頬の内側の口腔粘膜にコプリック斑と呼ばれる発疹が出てきます。ただし、発疹が出たタイミングで受診しないと分からず、コプリック斑を見たことがないという医療従事者も多くいます」(カタル期)。 さらに「その頃に熱が一瞬37度台に下がり、半日程度で今度は40度近い高熱と全身に赤い発疹が出て、ここで初めて臨床医が麻しんを疑うことになります(発疹期)。様子を見ている間に、もし解熱剤を飲んで仕事に行くと周りにうつしてしまう」と注意を呼びかけた。麻しんと診断されて保健所に届け出ると咽頭ぬぐい液、血液、尿などの検体を採取し、遺伝子検査を行って初めて確定診断となる。その後「最初は一つひとつ出ている発疹が、だんだんくっついて世界地図のようになり、色素沈着を残しながら治っていきます」(回復期)といった経過をたどるという。
麻しんの問題点について、川上理事は「新型コロナウイルスの実効再生産数(1人の感染者による二次感染者数)は2~3人くらい。麻しんの場合は12~18人くらいと言われ、非常に感染力が強いことが恐れられる理由」と指摘。2015年に麻しんの排除状態にあると認定された後も流行を繰り返しているが「なぜ排除国の認定を取り消されないかというと、日本固有のウイルスではなく海外からの持ち込みで流行しているから」。今回の流行に関しては東京都、大阪府、奈良県をはじめ全国で感染者が報告され、ワクチン接種歴は0~1回および不明。国外で感染した人の感染地域はアラブ首長国連邦、タイ、インド等。 これまでの日本のワクチン接種の経緯を「1966年に接種が開始され、1969年に現行の生ワクチンに移行。1978年10月、1~6歳の幼児を対象に定期接種が始まりました。2006年から現行のMRワクチンに移行して第1期を1歳児、第2期を就学前の1年で定期接種していますが、 2006~2007年に10~20代の間で麻しんが流行。2008年から5年間は中学1年生相当に第3期、高校3年生相当に第4期と2回接種の機会が与えられました」と説明。2019年3月~2025年3月まで、風しんの抗体価が低い成人男性を対象に第5期定期接種の機会もある。