《ブラジル》日伯で社会的共通資本の理解深める=京都大学、USPでフォーラム
京都大学人と社会の未来研究院社会的共通資本と未来寄附研究部門は13日、日本を代表する経済学者・宇沢弘文氏(1928年~2014年)の提唱した「社会的共通資本」についてのフォーラムをサンパウロ市のサンパウロ大学(USP)で開催した。 社会的共通資本とは「ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置」のことを指し、「自然環境」「社会的インフラストラクチャー」「制度資本」(教育、医療、文化など)の3分野から構成されている。 フォーラムには日本から宇沢氏の長女で宇沢国際学館代表を務める占部まり氏がモデレーターとして参加。パネリストに同じく日本から京都大学舩橋真俊特定教授、京都大学渡邉文隆非常勤研究員、りんくう総合医療センター南谷かおり健康管理センター長が参加した。当地からはパネリストとして、日本食レストラン「藍染」の白石テルマシェフ、サンタクルス日本病院の西国幸四郎理事長、USPのパウラ・ペレーダ教授、タイス・マウアヂ教授が参加した。 来賓として出席した林禎二駐ブラジル日本国特命全権大使が挨拶に立ち、「ブラジルには社会的共通資本に関わる問題が多くあり、こうした議論ができることは素晴らしいことだと思います」とフォーラム開催を祝した。 フォーラムでは始めに、占部氏が地球温暖化を防ぎながら誰にも公平で豊かな持続可能環境の在り方について説き、舩橋教授が、経済と自然環境を共存させる仕組みとして、拡張生態系に基づく自然―社会共通資本論の提案を行った。その後、パウラ教授が「環境変動と社会的共通資本」の講演を行った。 その後のパネルディスカッションでは、寄付研究分野の専門家である渡邉研究員が、社会的共通資本における公平なアクセスと制約に着目したマネジメントの重要性を述べ、神経外科を専門とする西国理事長が各人の健康が周囲の人に与える影響と社会的共通資本との関わりについての所見を述べた。白石シェフは、日本人移民がブラジルに与えた哲学的な影響を食文化の観点から語った。日本で在日外国人の診療活動にあたっている南谷センター長は、日伯の医療制度の違いと課題について触れ、医療の観点から人が幸せになるためには何が必要か問いかけた。タイス教授は食のマネジメントと健康に関する研究を紹介し、ブラジルの病院食の取り組み事例などについて述べた。