反日感情を煽ったLINEヤフー問題、日韓首脳会談でさらに炎上…尹大統領の同類扱いされる岸田首相が関係改善の足かせ
■ 岸田首相は尹大統領の「同類」 安倍晋三元首相と比べると、そもそも岸田首相に関する韓国での報道はもっぱら支持率低迷に関するものばかりで、それほど関心が高いとは言えない。口を開けば韓国メディアが一斉に拒否反応を示すほど、良くも悪くも注目されていた安倍元首相とはまったく対照的である。 こうしたことから、私の授業中に日韓関係が話題に上ったとき、韓国での報道データを根拠として「皆さんは安倍さんよりも岸田さんの印象の方が良いようですね」と話したところ、生徒たちに目を丸くされてしまった。注目度は低いが好印象というわけではなく、むしろ岸田首相は尹大統領と仲が良さそうということから、「同類」と捉えられているようなのだ。 そうした見方は私の教え子だけではない。街中で韓国人に聞いてみると、岸田首相は尹大統領と同様に評判が良くない。 例えば、尹大統領は国民とのコミュニケーションが不足しており、そのために「独善的」と評されることが少なくない。日韓関係の改善も独善的に進められていると思われている。 尹大統領と日韓関係の改善に努める岸田首相は、そんな独善的な尹大統領から信頼された協力者としか思われていないようだ。 LINEヤフー問題は、こうした状況のなかで反日感情を焚き付けた。「日本政府がLINEヤフー問題でネイバーに圧力をかけた」と感じ、岸田首相の印象がさらに悪化したと吐露する韓国人もいる。
■ 岸田・尹体制の下での関係改善は難しい いまの日韓首脳が韓国の反日感情を克服するのは、正直なところ難しいだろう。 かつて小渕恵三首相と金大中(キム・デジュン)大統領の時代、韓国では日本文化が開放され、一時的ではあったものの反日感情が克服された。 もちろん、日本文化開放は、金大中政権が目標にした情報先進国への一つのプロセスであった。その点で韓国の国益に利するものであったわけだが、それでもその後、日韓両国間の往来が活発化するという成果をもたらした。 だが、今回の日韓首脳会談では、韓国の反日感情という火に油を注いでしまった。尹大統領のもくろみどおり、LINEヤフー問題が外交問題に飛び火せず、穏便に済んだとしても、反日感情という炎を煽ってしまった。日韓関係が改善し始めていただけに、LINEヤフー問題を契機に反日感情が再び燃え上がるようなことになるのは、残念でならない。 平井 敏晴(ひらい・としはる) 1969年、栃木県足利市生まれ。金沢大学理学部卒業後、東京都立大学大学院でドイツ文学を研究し、韓国に渡る。専門は、日韓を中心とする東アジアの文化精神史。漢陽女子大学助教授。
平井 敏晴