反日感情を煽ったLINEヤフー問題、日韓首脳会談でさらに炎上…尹大統領の同類扱いされる岸田首相が関係改善の足かせ
■ 「韓国のIT技術が日本に奪われる」 「このままではLINEが日本に乗っ取られる」といった経済戦争さながらの指摘がメディアやネットで飛び交った。とりわけ注目すべきなのは、ネイバーの労組が「LINE系列の人材と彼らの技術、ノウハウに対する保護が必要」だと懸念を表明したことだ。 LINEは日本で開発されたサービスであるものの、親会社は韓国企業である。そのため、LINEの開発には韓国のIT技術や技術者も関わっているとされる。 LINEヤフー問題をめぐる現地の報道では、日本におけるデジタル化の遅れが背景にあるとする識者のコメントが頻繁に引用されている。ゆえにこの一件は、IT先進国である韓国にとって、国益損失の重大危機を意味するのだ。 韓国に20年近く在住する日本人としては、この一連の報道は、時代の流れを実感させる。かつては日本の技術が韓国に奪われ、そのうち追い越されるのではと危惧されていたが、それがネット、スマホ時代に立場が完全に逆転した。今度は韓国が、「日本に技術を奪われる」と危惧する立場になったわけである。 こうした状況が起きるのは経済競争の宿命かもしれない。だが、日本と韓国の関係が特異なのは、日本との競争が絡むと韓国では必ず反日感情が頭をもたげてしまう点にある。
■ 民間レベルでの関係改善が望まれるが… その一例が、“尹大統領は韓国を日本の属国にする”という見方だ。それは前出の「白旗を挙げた降伏宣言」という野党関係者の発言に明確に表れている。LINEヤフー問題についての記事に関するネット上の書き込みでも、かつて日本が朝鮮を保護国とした1905年の日韓保護条約に例えるものもあった。 尹大統領による今回の発言は、LINEヤフー問題を外交問題に飛び火させず、穏便に済ませようという意図が垣間見られる。だが、26日のNHK「日曜討論」で、韓国政治を専門とする慶応義塾大学の西野純也教授も指摘したように、そもそも尹大統領が不人気であることが災いして、このところ日韓関係が改善してきたことについて、韓国社会ではまったくと言ってよいほど評価されていない。 さらに同番組では、日韓関係改善が国民レベルで実感できるよう策を講ずべきという議論がされていた。これまでの両国の関係改善は、外交や経済レベルでの改善に限定されており、韓国国民が広く実感しているわけではないというのがその理由だ。 この議論は、韓国の反日感情をどう克服するのかという問題に通じている。政府間でいくら良好な関係を築いても、韓国社会の意見と合致しているわけではない。 だから、関係改善によってメリットが感じられれば、韓国社会は反日感情を克服できるという見立てだ。1カ月ほど前に韓国の外交部高官が「日韓はパスポートなしで往来すべき」と発言したのは、そうした背景がある。 とはいえ、日本側にも関係改善を阻む足かせがある。岸田文雄首相が尹大統領と同様に、韓国で嫌われ者になっているのだ。