「ズルい人」がはびこるこの世界では全員カモ? フェイクばかりの現代社会を生き抜く思考術とは【書評】
あなたは騙されやすいだろうか。
SNSによる噂、ディープフェイクで作られるニュース、謎のCM、私たちを騙す要素はそこかしこに溢れている。もはや全人類が、「騙される側」になっていると言えるだろう。『世界最高学府で教える人心操作の授業 全員カモ「ズルい人」がはびこるこの世界で、まっとうな思考を身につける方法』(ダニエル・シモンズ:著、クリストファー・チャブリス:著、児島 修:訳、橘 玲:解説/東洋経済新報社)は人がなぜ騙されるのか、どのような思考や推論のパターンが狙われていくか、認知心理学の視点から解説した本である。 心理学部の教授と意思決定や注力を専門に研究する学者である著者2人は、「見えないゴリラの実験」で、イグ・ノーベル賞を受賞した。その実験とは、被験者はまず、ボールをパスし合う動画を見せられ、パスの回数を数えてほしいと指示を受ける。実は動画の途中、パスし合う人の中をゴリラの着ぐるみが横切っていたが、集中して数えていた人は大半が気づかなかったという結果が出たという。人は何かに夢中になるとどうも視野が狭くなりがちなようだ。 冒頭の問いに立ち戻ってみよう。私は大丈夫と思っている人ほど危ない。冒頭の橘玲氏による解説にもある通り、ニュースで特殊詐欺の手口を見たとき、なぜこんなことで騙されるのかと不思議に思うだろう。しかし、もともと人間は騙されやすい性質がある。 私たちは、はっきりとそれを否定する証拠が示されないかぎり、見聞きしたものが本当だと思い込む。この現象は「真実バイアス」と呼ばれている。 人は聞いて、すぐに信じてしまう。せいぜい、後から時々確認する程度だそうだ。何かしら思い当たる節はあるのではないだろうか。これは脳みそのバグではない。もともと人間は目の前のことを信じてしまう傾向があり、大抵の場合、人は人が本当のことを話すと思っているのだ。 この本では、4つの「ハビット」、4つの「フック」をテーマに、人の騙されやすさが実例と共に紹介されている。