【アイデアの盗作?】生成AIが作った生成物に著作権を与えるべきか、懸念されるクリエイターの未来
2024年10月、ノーベル物理学賞に続き、化学賞でも人工知能(AI)関連分野の受賞が決まりました。いまや生成AIの登場は社会に大きな変化をもたらし、私たちはその利便性を享受しています。しかしその一方で、「学習型のチャットボットが差別的発言を繰り返す」「採用人事で男性に優位な判定を下す」「著作物を無断で学習データとして読み込む」「偽情報の生成・拡散が簡単に行われる」「膨大なエネルギー消費による環境破壊」など、生成AI社会に潜む倫理的な課題は後を絶ちません。 私たちは生成AI技術を通して、知らず知らずのうちに大規模な搾取に加担してしまっているのでしょうか。また、これからの社会で求められる倫理とはどのようなものなのでしょうか。本コラムでは生成AIが抱える問題点に触れながら、これからの社会に必要な「倫理的創造性」について迫ります。 *本記事は青山学院大学准教授の河島茂生氏の著書『生成AI社会 無秩序な創造性から倫理的創造性へ』(ウェッジ)の一部を抜粋・編集したものです。 連載一覧はこちらから 生成AIの生成物は、できあがったものをみると、テキストであれ、画像であれ映像であれ、クオリティがかなり上がってきています。 できあがったコンテンツだけをみて、人が作ったものかAIが生成したものなのかをきちんと判断できるかというと、難しいケースがあります。 できあがったプロダクト――詩や音楽のような芸術作品だけでなく、数学の定理や科学的仮説、ビジネスプラン、工学設計なども含んだ人工物のこと――に着目した場合、人と機械とでは差が見出しがたいのです。 2022年8月に画像生成AIのMidjourneyで生成された絵が美術のコンテストで1位となりました。AIを使って3週間で100篇の小説を書いて、星新一賞に入選した人も出ました。 また、AIを使って書かれた小説が芥川賞を受賞することも起きました(*1)。AIで生成した画像が権威ある写真コンテストで受賞してしまい、作品を手掛けたドイツの写真家が受賞を辞退することもありました(*2)。 こうした例は、これからも多く出てくるでしょう。生成AIを使った創作が広まり、むしろ話題にならなくなるかもしれません。 *1 島田尚朗(2024)「AIが〝生んだ〟芥川賞「東京都同情塔」誕生秘話を作家が明かす」『NHK WEB特集』(2024年5月31日アクセス) *2 真田嶺(2023)「この写真に違和感ある? 権威ある写真コンで受賞→辞退,理由は…」『朝日新聞DIGITAL』(2024年5月31日アクセス)