沢村賞の「該当者なし」は正当か否か 賛否両論を呼ぶ“シビアすぎる基準” 現状維持を推す声も「保った方が価値は上がる」
注目を集めた選考結果は、いささかなりとも驚きを呼ぶシビアなものとなった。 10月28日、シーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる「沢村賞」の選考委員会が開かれ、今年は該当者なしとすると発表された。同賞の「該当者なし」は、2019年以来5年ぶり6度目の出来事となった。 【画像】押さえておきたい「2024ドラフトの目玉」たちを厳選! 注目選手のプレー写真&寸評を一挙紹介 今季のプロ野球界に受賞候補者がいなかったわけではない。巨人の菅野智之、戸郷翔征、日本ハムの伊藤大海、ソフトバンクの有原航平、DeNAの東克樹が受賞の可能性を持ち、選考委員会内でも議論されていたという。 それでも最終的に「該当者なし」という決断に至った。選考委員会としては、同賞の“価値”を保つために設けた基準に見合った選手がいなかったという判断なのだろう。 ちなみに投手たちの“ハードル”となっている基準は以下の7つだ。 【1】15勝以上の勝利数 【2】150個以上の奪三振数 【3】10以上の完投試合数 【4】2.50以下の防御率 【5】200イニング以上の投球回数 【6】25以上の登板数 【7】6割以上の勝率 一見するだけでも不世出の大投手である沢村栄治氏の名が冠となった賞のハードルの高さを感じさせる。実にシビアだ。ちなみに沢村氏もこの基準を満たしたのは、1937年春のシーズンだけ。この年の同氏は30登板(24先発)で、244回を投げ、24勝、24完投。さらに196奪三振、防御率0.81のハイアベレージを記録している。 この沢村氏の異次元さはリスペクトすべきではある。ただ、時代は大きく変化し、投手を巡る情勢も様変わりしている。とくに昨今の野球界ではアマチュアも含めて分業制が進化し、「200イニング以上の投球回」と「10完投以上」の基準を満たすのは至難のワザといえる。 ゆえに今回の選考結果は少なからず反響を生んでいる。Xでは「評価基準の価値観がズレてきている気がする」「時代に沿った基準に変えないと」「完投数は現代野球ではクリアはほぼ不可能でしょ」と異論が相次いだ。一方、委員会の決定に賛同するファンも少なくなく、「価値を守り抜いた委員会の判断は正当」「基準を変えたら沢村賞ではない」「該当者なしは納得。ある程度は基準を保った方が価値は上がる」といったコメントも目立った。 果たして、沢村賞の在り方は時代に沿っているのか――。世間の反響を見ても、選考基準にメスが入れるべきかを含めた議論の必要がありそうだ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]