【プレイバック’14】「すぐ後ろを歩いていた女性が…」池袋〝危険ドラッグ〟事故 戦慄の目撃証言
10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたび振り返る【プレイバック・フライデー】。今回は10年前の’14年7月11日号掲載の「池袋 8人をハネた脱法ハーブ男 暴走車が私の眼前で激突 撮った!」をお届けする。 【地獄絵図】すごい…倒れた女性の周囲には血だまりが…池袋西口暴走車事故の凄惨現場 ‘14年6月24日午後8時、JR池袋駅西口交番前の通りで、暴走車によって20代の女性が死亡、20代から30代の男女7名が重軽傷を負った事故。その中で間一髪、災難を免れた第一通報者の証言だ(以下《 》内の記述は過去記事より引用)。 ◆「1m横を車が通り過ぎていった」 《「ガッチャ~ン!」と重い鉄板が落ちたかのような音と「キャ~ッ!』という悲鳴が同時に背後から聞こえました。振り返ると、40mほど後ろで若い女性とスーツの男性が倒れていて、歩道をRV車 が蛇行しているのです。車は時速40~50㎞でこちらに向かってきました》 事故の様子を語る飲食店勤務のA氏は、店に出勤するために繁華街を歩いていたという。そこへ突然暴走車が迫って来たのだ。暴走車との距離はあっという間に3~4mまでになった。 《車は、私のすぐ後ろを歩いていたピンクの服と、黒いワンピースの女性二人をハネ飛ばして、ポストにぶつかりました。 その衝撃で少しスピードが落ちたのです。私はとっさに車道のほうに飛びのきました。車は私の横1mのところを通り過ぎ、すぐに電話ボックスにぶつかった。生きた心地がしませんでした》 車はボンネットが大破してようやく止まった。それまで運転手はアクセルを踏みっぱなしで、ハンドルはまったく切られていない状態だったそうだ。 《「なぎ倒されたポストのそばには、さっき私の後ろでハネられたピンクの服の女性と、白目をむいて口から噴水みたいに血を吹き出している黒ワンピの女性が重なって倒れていました。ピンクの女性はいったん地面に手をついて体を起こそうとしたんですが、またすぐうつぶせに倒れてしまいました」 まもなく、交番から警察官が駆けつけた。A氏は119番通報し、2人の女性に、「救急車が来るまでがんばって」と声をかけた。女性は弱々しくうなずいていたという。5分ほどで救急車が到着。黒ワンピの女性のまわりには、すでに血だまりができていた》 自動車運転処罰法違反で現行犯逮捕されたB容疑者(当時37)は脱法ハーブを吸引後に運転していた。警察官に車から引きずり出されるときもヨダレを垂らし、A氏によると「自分がしでかしたことを、まったくわかっていないようだった」という。 B容疑者はかつて法定金利の約19倍という高金利のヤミ金融で働いていたことがあり、’03年には貸金業法違反と出資法違反容疑で逮捕されていた。知人によれば、事件当時は六本木のクラブで働いていたようだったという。 B容疑者は警察の調べで「運転前に脱法ハーブを吸った。(現場の手前の)池袋北口まで覚えているが、その後は警察官に声をかけられるまで全く記憶がない」と供述した。捜査の結果、B容疑者の車内で発見された植物片から合成カンナビノイドの一種の成分が検出されたが、この当時は法律で規制されていないものだった。この事件が契機となってその後指定薬物に指定されている。 ‘95年頃から法律では規制されていない薬物が「合法ドラッグ」として売られるようになった。その後、名称が誤解を与えるとして「脱法ドラッグ」と呼び名を変えた。’00年代にその1種である「脱法ハーブ」という大麻に類似した合成カンナビノイドを含んだものが出回り始める。メディアでとりあげられたりインターネットでも販売されていたことから’11年頃に爆発的にユーザーが増加し、吸引による健康被害や事故などが社会問題化した。その対策として’13年に薬事法が改正され、取り締まりが厳しくなったばかりだった。 この池袋の事故をきっかけに「脱法ドラッグ」は新たに「危険ドラッグ」と呼ばれることとなり、全国的に取り締まりも強化される。その成果もあって’14年に危険ドラッグの使用によって死亡したとみられる人は112人だったのが’15年には11人に激減、その後も減り続け’20年~’23年はゼロだった。 だが、今年1月から2月にかけて合成麻薬LSDに類似した成分の危険ドラッグを摂取した20代の男女がマンションから飛び降りて死亡するケースが2件起こっている。また、昨年11月に法律で規制されていない大麻に似た成分を含んだ「大麻グミ」を食べて病院に搬送されるケースが続出したことも記憶に新しい。法律の網が及ばない「危険ドラッグ」はまだまだ存在するのだ。
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