U-23のJ3参戦 見えてきた問題点と希望
U‐23チームを参戦させている3つのクラブは、かねてから下部組織における育成に注力。セカンドチームを保有し、下部リーグで戦わせることのできるシステム作りを熱望していた。 G大阪とC大阪は練習の段階からトップとU‐23を分けて、プロ野球の一軍と二軍のように独立したチームとして活動させている。特に後者はU‐23を「SAKURA NEXT」と命名している。 対照的にFC東京は全員が一緒の練習メニューを消化し、週末を前にトップとU‐23に分けられる。関西の2チームと異なるアプローチの意図を、立石敬之ジェネラルマネージャーはこう説明したことがある。 「チーム全員が週末に試合をすることが一番大事であり、そこからのフィードバックを翌週以降のトレーニングに落とし込んでいかなければ、若い選手はなかなか伸びていかない」 FC東京のトップチームに登録されているのは34人。まずJ1の公式戦にベンチ入りする18人が優先されると、けが人やACLなどの関係もあってJ3に臨む人数は必然的に少なくなる。 J3は今シーズンから、リザーブの人数を5人から7人に増やしている。しかし、FC東京はGKを含めてわずか3人だけという試合が、開幕戦を含めて3度も数えたことで少なからず波紋を呼んだ。 一方でG大阪とC大阪のリザーブを見ても、実は全9試合で7人に達していない。他のJ3クラブも同様で、定員を割った試合は延べ30回。全試合で7人のリザーブをスタンバイさせているチームは、長野、大分、栃木、福島ユナイテッドFCの4チームしかない。 こうした点はJ3全体の選手のレベルやコンディション作りとも、大きく関係しているのだろう。そうした状況で、U‐23チームはユースに所属したままトップチームの試合に出場できる2種登録選手を数多く起用。決して人数合わせではなく将来を見すえながら、真剣勝負の舞台で経験を積ませている。 さらにC大阪は5月に入って、将来を嘱望されている183cm、72kgの大型センターバック、高校1年生の瀬古歩夢を追加で2種登録した。同じ図式が、すでに飛び級で昇格したFC東京・U‐18やU‐17日本代表で活躍中のバルセロナ帰りの中学3年生、FW久保建英にもあてはまる可能性もある。 高校3年未来の金の卵たちを先取りする形で見られることは、ファンやサポーターにとってもこの上ない楽しみとなる。しかし、U‐23チームのなかのバランスが「育成」に傾きすぎれば、冒頭で記したようにリーグ内で違和感や温度差を生じさせかねない。 そうした事態を避けるために、JリーグはU‐23チームの参加数を「純粋なJ3クラブの3分の1を超えない数を上限とする」と規定。詳細などは未定だが、早ければ今シーズンの成績を受けて、U‐23チーム同士の入れ替えも行いたいとしている。 今シーズンは13クラブなので上限は「4」となるが、サガン鳥栖が財務的な裏付けや選手保有層の厚さを審査された末に見送られた。来シーズンへ向けて上限を超える参入希望があった場合、下位に沈んだU‐23チームは安穏としていられない。だからこそ、真剣勝負で勝ちにもくる。 U‐23チームでは3枠のオーバーエイジが認められていることもあり、G大阪は二川孝広、C大阪は橋本英郎といった元日本代表のあるベテラン勢を中盤で起用。若さに経験を融合させて、育成と勝利の二兎を追っている。前出の幹部はこうも付け加えた。 「今年のJ3は間違いなく混戦になる。去年までとはまったく異なるU‐23チームから、勝ち点をしっかりと稼げるかどうか。ここがポイントになってくる」 U‐23チームでのプレーが評価され、トップチームに活躍の舞台を移した選手は現時点でまだいない。それでも、J3における戦いぶりを見る限りは、試行錯誤の末にスタートした新たな育成方法は順調な軌道を描いているといっていい。 (文責・藤江直人/スポーツライター)