ヴィンテージ腕時計を学ぶ──ロレックス「手巻きデイトナのトラブルからわかること」
本格化するヴィンテージ腕時計のブーム。この企画では旧き良き時計界のヒト・コト・モノを探訪。今回は初期型の手巻きデイトナをお手本に、ロレックス流のムーブメント調整術を学ぶ。 【写真を見る】ロレックスバルジューの持病とは?(全28枚)
第2回:ロレックス「手巻きデイトナのトラブルからわかること」
ヴィンテージ腕時計のブームが本格化している。この企画では古き良き時計界にまつわるヒト・モノ・コトを探訪。今回は初期型の手巻きデイトナをお手本に、ロレックス流のムーブメント調整術を学ぶ。 東京・八重洲の修理工房「ゼンマイワークス」。代表の佐藤努さんは、確かな技術と気さくな人柄で、我々のような時計愛好家から慕われる存在。時計修理の駆け込み寺である。 今回ここに持ち込まれたのは、Ref.6239のリファレンスナンバーを持つロレックス「デイトナ」。いわゆる“手巻きデイトナ”の最初期モデルで、シリアルナンバーから類推すれば、製造されたのは1966年頃だろう。正式名称は単に「コスモグラフ」と言って、この時代の「デイトナ」はあくまで通称だ。まだクロノグラフのプッシャーにスクリューロックが装備される前だから、防水時計を意味する「オイスター」の名も付かない。そんなモデルが“止まり”で持ち込まれたのだが、ケースを開ける前から、佐藤さんには症状に心当たりがあるようだ。果たしてそれは……?
搭載ムーブメントは第2世代のCal.722-1
手早く撮影を終わらせて、早速ケースを開けてもらうと、中から出てきたのはロレックスバルジューの第2世代にあたるCal.722-1。歴代の手巻きデイトナには、バルジュー製のCal.72をロレックスが独自に調整したムーブメントが搭載されているのだが、これはその中期型。 ロレックスが独自に設計したフリースプラング式のテンプとテンプ受け、キフ製の耐震装置、ヒゲ絡みを防止するためのプレートなどが追加されており、第1世代のCal.72Bからさらに変更された点と言えば、12時間積算計を駆動させる補助パーツとしてコンベアスプリングが追加されていることが挙げられる。ちなみに第3世代のCal.727はテンプが少しだけ小径化されて、ハイビートの2万1600振動/時になるのだが、この第2世代まではロービートの1万8000振動/時だ。