小池知事の掲げた「花粉症ゼロ」 木製ガードレールが促進するか?
早くも来春のスギ花粉の飛散予測が出始めています。ウェザーニュースによると、来春のスギ花粉の飛散量は全国的に平年並か、平年より多いと予測されており、花粉症に悩む人たちにとって今から気が重い日が続きそうです。 2016年に就任した東京都の小池百合子知事は、花粉症ゼロを知事選の選挙公約に掲げていました。その後に希望の党を結成して臨んだ2017年の衆議院選挙でも打ち出しています。 アレルギー疾患とされる花粉症を政治で治す――。奇想天外な政策のようにも映りますが、都政と花粉症は決して無関係ではありません。なぜなら、都民が苦しむスギ花粉の多くは東京の多摩地域の山林から飛散していて、実際に都は石原都政時から対策に取り組んでいるからです。
無花粉スギなどへの植え替えに着手
多摩山林のスギの木は、基本的に高度経済成長期の頃、植林されました。当時、戦災復興を急いでいた政府や東京都は、住宅建材不足を解消することを目的に植林事業に着手しました。しかし、海外からの安価な輸入建材が増えたことで、国産木材の流通は減少。それに伴い、多摩山林のスギは放置されたのです。 近年は、品種改良によって花粉量の少ないスギや無花粉スギなどが開発されていますが、林業の担い手が少なくなったことで間伐が進まず、旧来のスギの植え替えが進んでいません。 これら花粉飛散量の多いスギを無花粉スギなどに植え替える作業のためには、林業の振興が欠かせません。そして林業を振興するには、国産木材の需要を増加させる必要があります。そうした背景から、2010年に政府は公共建築物への木材利用を促進する法律を制定し、木材の活用を喚起しました。 政府の動きを受け、地方自治体や民間の建設会社でも木材を積極的に使うような潮流が見られます。特に、東京都心部は高層ビルが立ち並ぶことから、木材を活用した潤いのある空間づくりが進んでいます。
新国立競技場など木材活用例増える
2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場にも国産材が活用されます。 近年、工法技術の進化によって木材の耐震性・耐火性が向上し、大型建築物でも使われるケースが出てきています。増加傾向にあるとはいえ、国産材の使用量はいまだ限定的です。国内林業を活性化させるには至っていません。 林業の停滞は、特に地方の産業・経済に大きな影響を及ぼしています。長野県や秋田県といった林業が盛んな県は、経済活性化・地域振興を目的に地元の木材を使うよう奨励しています。