野村克也もアメリカ人監督も絶賛した“169cmの日本人投手”「メジャーで通用する」「まるでやり投げの投球フォーム」山口高志を“生で見た”男たちの証言
速球に生きた男
4年目の1978年は、チームの先発に大エース山田に加えて、今井雄太郎や佐藤義則などの駒が揃ったことから、ほぼリリーフ専任になり、13勝4敗14セーブという好成績を残し、最優秀救援投手のタイトルを獲得した。しかし、この年の日本シリーズ前に腰を故障し、以後全盛期の速球がよみがえることはなかった。 球団の先輩の山田が成功したように技巧派への転向を勧める声もあったが、本人にその気がなかったという。〈それでプロに入ったんや。それしかないやろ〉(『君は山口高志を見たか』)。全力で速いストレートを投げ込む。それに生き、短命で散った投手だった。
江夏豊とベストシーズン比較
さて、当企画の現チャンピオン江夏豊とのベストシーズン対決である。山口のベストシーズンは、リリーフに固定された1978年になるが、この企画は先発完投型投手を対象としているので、山口が先発投手としてベストの成績を残した1975年の数字を採用する。(赤字はリーグ最高、太字は生涯自己最高) 【1968年の江夏】登板49、完投26、完封8、勝敗25-12、勝率.676、投球回329.0、被安打200、奪三振401、与四球97、防御率2.13、WHIP0.90 【1975年の山口】登板32、完投18、完封4、勝敗12-13、勝率.480、投球回203.0、被安打169、奪三振149、与四球75、防御率2.93、WHIP1.20 すべての項目で江夏が上回っている。1試合当たりの被安打数は、江夏の5.47に対して、山口は7.49。 1試合当たりの奪三振数は、江夏の10.97に対して、山口6.61。1試合当たりの四球数も、江夏の2.65に対して、山口3.33と、江夏の勝ち。防御率、WHIPでも江夏が勝る。この年の江夏が凄すぎることもあるが、投手の能力は球の速さだけでなく、制球力や投球術も大きく関わることを示しているとも言えるだろう。 それにしても、メジャー予備軍を含む全米大学選抜チームを1安打完封した頃の山口のストレートを見てみたかった。今でもそう思わせる、ロマンに溢れた投手だった。
(「プロ野球PRESS」太田俊明 = 文)
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