特殊詐欺で暗躍の「元暴アウトロー」警察が“大成敗”に乗り出すも…「社会的排除」では解決できない本質的な問題
特殊詐欺等を広域的に敢行する集団「匿名流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の取り締まりを強化するため、警察庁は1日、都道府県の垣根を越えて捜査にあたる「特殊詐欺連合捜査班」を発足させた。 【グラフ】特殊詐欺の検挙人員の推移 トクリュウをめぐっては昨年7月、従来の暴力団や準暴力団などに分類できない新たな犯罪グループとして警察庁が位置づけ、取り締まりの強化と実体解明に乗り出していた。 筆者は、トクリュウの犯罪が減じない要因のひとつとして、暴力団離脱者の問題があるとみている。(廣末 登)
暴力団構成員等が“主導的な立場”で特殊詐欺に深く関与
警察庁が発表した2023年の特殊詐欺の検挙をみると、暴力団構成員等(暴力団構成員および準構成員その他の周辺者の総称)の検挙人員は404人であり、総検挙人員に占める割合は16.2%であった。 暴力団構成員等の検挙人員のうち、中枢被疑者は24人、指示役として受け子・出し子を動かした者は17名、リクルーターは70人であった。 また、中枢被疑者の総検挙人員に占める割合は38.7%で、「依然として暴力団が主導的な立場で特殊詐欺に深く関与している実態が伺われる」と、警察庁はコメントしている(令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について〈暫定値版〉)。
暴力団を辞めても「暴力団員等」
ここでいう暴力団員等とは、暴力団を離脱して5年を経過しない者を含む。すなわち、社会復帰に失敗した真正離脱者や偽装離脱者を含んでいる。 筆者は、法務省の更生保護就労支援や保護司として、多くの暴力団離脱者と接するなかで、彼らの受け皿をつくる必要性を痛感してきた。 暴排条例が施行されてからの10年間、警察の支援で暴力団を離脱した5900人のうち、把握されている就労者は3.5%ほどである(自営を始めた者、縁故就労者は含まれない)。
暴力団離脱者の就労が進まない理由
離脱者の就労が進まない理由として、支援したある離脱者は「警察や暴力追放運動推進センターは、もとは反目(敵対していた)の組織だから頼りたくない」と言った。 そのほかに、「そういう場所に出入りしていると、あいつは警察の『S(スパイ)』だったのではないかという疑いを掛けられる恐れがある」という理由もあった。 また、これは暴力団離脱者に限らず一般の刑法犯も同様であるが、彼らは「お役所然」とした場所に行くことを忌避する傾向がある。たとえば、ハローワークの初期手続きは、支援員が同行すれば行くものの、その後の求職活動に行かない者が大半であった。