【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…8月第3週の「米国経済」の動き
不安定ながらも円高傾向が続く値動きのなか、「円安トレンド」の転換が予感される現在、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、来週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな、先週の米国経済の動きについて、東京海上アセットマネジメントが解説します。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
弱めの指標が続くなか、7月の小売売上高は想定外の強さ
米労働省が公表した2024年7月の消費者物価指数(以下、CPI)は前年比+2.9%と、6月および市場予想(同+3.0%)を下回る結果となりました(図表1)。前年比上昇率が3%を下回るのは、2021年3月以来となります。 前月比では、+0.20%と市場予想通りの結果となり、6月の▲0.10%からプラスに転じました。食料品(6月︓前月比+0.24%→7月︓同+0.16%)がほぼ横ばいとなったものの、ガソリンなどのエネルギー(6月︓前月比▲2.04%→7月︓同+0.03%)がプラスに転じたことが、CPIを押し上げました。 変動の大きい食料品およびエネルギーを除くコアCPIも、前年比+3.2%(6月︓同+3.3%)と、市場予想通りの結果となりました。瞬間風速を映す前月比では、+0.17%と2021年1月以来の低い伸びを記録した6月(+0.06%)から反発したものの、インフレ率は、想定を超える強さをみせた1-3月期以降、落ち着きをみせています(図表2)。 FRBが注目する基調的なモメンタムを示す3ヵ月前比年率値(6月︓+2.10%→7月︓+1.58%)が大幅に鈍化したほか、6ヵ月前比年率値(6月︓+3.31%→7月︓+2.84%)は、2021年3月以来の3%割れとなるなど、インフレ率は着実に鈍化しています。
多くのコア財が低調のなか、住宅サービスインフレが加速
コアCPIの内訳をみると、コア財は5月に前月比▲0.04%の後、6月が同▲0.12%、7月が同▲0.32%と、ディスインフレ圧力を強めています(図表3)。 内訳をみると、家庭用品(前月比+0.06%)を除き、衣料品(前月比▲0.45%)や娯楽用品(同▲0.34%)など、多くのコア財が低調となっています。 一方、コアサービスは前月比+0.31%と、2021年8月以来の低い伸びとなった6月(同+0.13%)から加速しました。特に、これをけん引したのが住宅サービスインフレであり、⺠営家賃が前月比+0.49% (6月︓同+0.26%)、帰属家賃が前月比+0.36%(6月︓同+0.28%)と6月から予想外に加速しました。 また、コアサービスのうち、パウエルFRB議⻑が重視するスーパーコア(家賃を除くサービス)も前月比+0.21%と、3ヵ月ぶりのプラスに転じました。内訳では、医療ケアが5ヵ月ぶりにマイナスに転じたものの、宿泊費や航空運賃などの上昇が相殺した格好となりました。7月は、家賃を中心に住宅サービスのディスインフレの動きが緩慢であることが確認されました。今回の結果がFRBによる利下げを阻むものとならないものの、ディスインフレのプロセスが緩慢なものになる可能性を示唆しています。 CPIに先んじて公表された7月の卸売物価指数(以下、PPI)は、前月比+0.1%(6月︓同+0.2%)、食料品およびエネルギーを除いたコアPPIが同+0.0%(6月︓同+0.3%)と、ともに6月から伸びが鈍化しました。7月のCPIとPPIの結果を受け、FRBが最も重視しているコアPCEデフレーター(食料品およびエネルギーを除く)は、7月に前月比+0.2%と6月から横ばいとなることが予想されています(図表4)。 もっとも、予想通りの結果となれば、3か月前比年率値は+2.05%(6月︓+2.31%)、6か月前比年率値は+2.76%(6月︓+3.38%)となり、FRBのインフレ目標である2%が視野に入る計算になります。 現状、FRBはインフレよりも雇用に焦点を当て始めており、単月のインフレデータがFRBの政策スタンスに修正を迫ることはないと考えられます。9月のFOMCでは、0.25%もしくは、0.50%の利下げが予想されるものの、利下げ幅は今後公表される雇用指標によって決定づけられるとみられます。とりわけ、利下げ幅の最終的な判断は、9月6日に公表される8月の雇用統計によって、下される可能性が高いと予想されます。
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