器用に立ち回る後輩を見て落ち込む…上手な対処法を臨床心理士が解説
職場で器用に立ち回る後輩を目の前に、「あの子はあんなにできるのに、かたや私は……」と、後輩と自分を比較して落ち込んだり、器用に立ち回る後輩を目の前に、自分の存在が脅かされるのではと感じて不安になるといった声も聞きます。器用に立ち回るのが苦手だと感じる人の背景にありがちなことや、器用に立ち回る人を見て起きるモヤモヤをどう解消していくことができるのか。臨床心理士が解説します。 【写真】心が疲れていない? ストレスを感じている「10のサイン」
器用に立ち回るのが苦手……の背景にあるものとは?
(1)頼みごとをするのが苦手 器用に立ち回るのが苦手な人の中には、頼み事をすることへの抵抗感や苦手さを感じる人が多いように思います。頼み事をするのが苦手だと、大変であっても自分で抱えるしかなく、結果的に仕事を抱え込んでしまい、身動きが取れない、余裕がなくなるといった状態になりがちです。一方で、立ち回るのが上手な人というのは、人に頼み事をすることが上手で、自分で抱えるものが少なく、その結果フットワーク軽く動いているように見えるのではないでしょうか。 (2)相手の反応を考えすぎる 言いたいことはあるのに、「これを伝えたら相手はどう思うかな?」「自分の発言が相手を傷つけてしまうのではないか」など、頭の中で考えすぎて、結果的に言いたいことが伝わらなくて、もどかしい思いをする、相手を誤解させてしまうといったことも。 (3)ひとつのことに集中しすぎてしまう 器用に立ち回るのが苦手だという人は、与えられたことをきちんとやろうとか、誠実にこなそうと思って一生懸命仕事している人が多いように感じます。それ自体はすばらしいことですが、見方を変えると、完璧主義になりやすく、自身のストレスを溜めてしまう原因にもなりかねません。
器用に立ち回れない……と思った時に試してみたいことは?
(1) 後輩を観察してみよう 心理学ではモデリングと呼んだりしますが、うまく立ち回っていると感じる後輩のことを観察し、うまく立ち回れる理由を探ってみるという方法もおすすめ。その人の振る舞いや声かけのタイミング、表情などを観察し、マネできそうなところを取り入れてみると少し状況が変わっていくかもしれません。 (2)サポートを得られやすいコミュニケーションを心がける 周囲からサポート得やすくしたり、スムーズなコミュニケーションをしていくのに役立つのが、ソーシャル・スキルと呼ばれるものです。ソーシャルスキルとは、社会生活を円滑に送るために必要なスキル全般のことを指します。例えば、あいさつをしっかりする、労いや感謝の言葉を積極的にかける、相手の話をしっかり受け止める、頼ることを習慣化する、自分も積極的に相手をサポートするといったことです。一見当たり前のことのように感じるかもしれませんが、こうした行動の積み重ねによって、自分が過ごしやすい環境を作るのに役立ってくれますよ。 (3)その時に起きている自分の気持ちの状態に名前をつけて受け止める 器用に立ち回る後輩を見ていて、自分の中にどんな感情が浮かんでいますか? また、器用に立ち回る後輩に対して、モヤモヤの気持ちが湧いているとして、そういった気持ちが湧いてくることを否定したり、考えないようにしていませんか?ネガティブな感情は、考えないようにしようとすると、より強くなってしまうという特徴があります。あなたの中に湧いている気持ちに名前をつけてあげて、「今、こういう気持ちでいるんだな」と受け入れようとするだけでも、つらい気持ちが少し和らぐと思います。 (4)例外探しをする 普段は「私は器用に立ち回ることができない」と思っていたとしても、1度だけでも例外的に、うまく立ち回ることができた場面、乗り切った場面がなかったか思い出してみてください。そして、そのうまくいった場面で自分がどんな声かけをしていたか、どんな意識でいたか、どんな行動を取ったのかなどを掘り下げていくと、そこにヒントが隠れていることもあるかもしれません。
今できていることに意識を向けるのも大切
できているように見える人を目の前にすると、どうしても苦手な部分に意識を引っ張られがちですが、自分では気づいていない、すでにできているところ、よいところだってきっとあるはずです。そういったところに意識を向けることを心掛けてみてはいかがでしょうか。できている部分を知るだけでも、自分に対して肯定的な意識を持ちやすくなると思います。また、周囲にはあなたの仕事ぶりや人柄を評価してくれている人はいませんか? 評価するとは、言葉にするというだけでなく、そっと見守っていてくれるということなども含まれます。自分を取り巻く環境をいつもと違う視点で眺めて、自分の肯定的な部分について考えてみてくださいね。