10代で起こした強盗殺人事件。無期懲役で服役する30代受刑者の「贖罪」とは
強盗殺人事件で無期懲役となり、服役している30代の鈴木有介受刑者=仮名。彼は被害者遺族への謝罪についてこう語る。「謝罪して楽になりたいというのは自分のエゴじゃないか」 【写真】女性を金づちで撲殺し、強盗殺人罪で服役40年。人生の大半を刑務所で過ごす70代男の「罪の意識」と「社会復帰」
10代で知人を殺害し、無期懲役の受刑者を多く収容する徳島刑務所(徳島市)で服役する。今も被害者の夢を頻繁に見るという。一緒に笑い合っていることもあれば、刺した場面が出てくることもある。贖罪と更正について思いを巡らせる日々だ。 ここ数年、闇バイトなどで安易に凶悪事件に関わるケースが目立つ。日本の法律では、18歳以上が強盗殺人罪に問われた場合は、死刑か無期懲役のみが選択肢となる。仮に未成年でも長期の服役となる可能性が高い。 凶悪事件を起こした無期懲役囚が何を感じて生きているのかを知ろうと、記者は徳島刑務所で3人の受刑者にインタビューした。うち1人が10代の時に事件を起こし、今後、長期に渡って刑務所で過ごすことになる鈴木受刑者だった。(共同通信=今村未生) ※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ※刑務所内で撮影したルポ動画は「共同通信YouTube」でご覧ください。
▽怒りを抑えられず、知人を殺害 鈴木受刑者の両親は、小学1年のころ離婚。母親が家を出て、父親と祖母と暮らした。父親は子育てに関与しなかった。祖母が他界し、小学5年のころ、児童養護施設に預けられた。 事件を起こしたのは、施設を出て、ネットカフェなどを転々としていた10代の時だ。トラブルになっていた知人男性から投げかけられた言葉、そして彼の行為に怒りを抑えられなかった。 男性を包丁で刺して殺害し、財布や携帯を持ち去った。強盗殺人罪などに問われ、裁判で無期懲役が確定した。 「憎悪を消し去るために、殺意がわっと湧いてしまった」。当時の状況を淡々と振りかえる。「10代の僕には歯止めが利かなかった。人間の良心を乗り越えてまで、それをする必要があったのかと今は思う。なぜ踏みとどまれなかったのだろう。自問自答がずっと続いている」 ▽救いを求めたのは宗教だった 自分の犯した罪に向き合う中で、難題にぶち当たった。「これからどうやって生きていけば良いのか」。救いを求めたのが宗教。キリスト教系の施設で育ったこともきっかけになった。服役して2、3年になるころ洗礼を受けた。「自分が改善、更生するための道として、僕には宗教がはまった」。独学で神学を勉強。分からないことは大学に手紙で質問するなどしている。
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