10代で起こした強盗殺人事件。無期懲役で服役する30代受刑者の「贖罪」とは
児童養護施設の職員は面会に訪れてくれるが、弟と妹とは事件を起こしてから音信不通だ。手紙にも返信がなく、最近は自分から何か行動を起こそうとは考えなくなった。 今の生活を支えているのは、自身が人間として成長を続けること。「心というか、魂というか、そういうものを向上させること。それが改善更生につながるのではないか」との思いが芽生えているという。 ▽無期懲役受刑者の考える「更正」とは 法務省によると、2022年に仮釈放された無期懲役受刑者の平均受刑期間は45年3カ月。30代の鈴木受刑者にとって先は長い。青年期から中年にかけての、体力があり活動的に過ごせる期間を刑務所内で生活することになる。 鈴木受刑者は「時間の感覚はまひしてしまった」と話す。「1年が過ぎるのはあっという間な気もする。長いけれどもそれが自分の犯した罪の結果で、受け入れて生活するのが受刑者としての務めだと思っている」 刑務所で生活していると、反省している様子が見えない受刑者に会うことがある。「被害者の人が聞いたらどう思うんだろう」と感じるような言葉を吐く受刑者もいる。
だが、鈴木受刑者は犯した罪と向き合う道を選んだ。「僕は落ちるところまで落ちてしまった。更生とは何かを考えていったら、自分自身が変わることだ。変わるためには誰よりも自分のことを見つめないといけない」 ▽被害者遺族への謝罪、弁済は手つかず 刑を受け入れ、更生への思いを口にする鈴木受刑者。一方で、被害者遺族への手紙は書いておらず、被害弁済も一切していない。 遺族への謝罪についてはどう考えているのか。記者が疑問をぶつけるとこう答えた。 「謝罪したいというのは加害者側のエゴではないか。遺族は僕の存在を思い出し、つらくなるのではないか。謝罪が本当に償いになるのか。ジレンマを抱えている」 3人の無期懲役囚にインタビューした記事。前回は約40年間を刑務所で過ごした70代受刑者を取り上げた。【女性を金づちで撲殺し、強盗殺人罪で服役40年。人生の大半を刑務所で過ごす70代男の「罪の意識」と「社会復帰」】
次回は無期懲役刑で服役し、その後仮釈放されたのに、2度も刑務所に戻ることになった72歳について伝える。彼は自分の「更生」をどう考えているのか。
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