「岡田准一はすごいヤツ」監督をうならせた、見たこともない殺陣とアイデア
藩の重臣らの不正を正したことで、妻とともに国元を離れざるを得なくなった瓜生新兵衛(岡田准一)。やがて彼は、異郷の地で病に倒れた妻、篠(麻生久美子)の願いを聞き届け、一人、国に帰る。妻の願いとは、新兵衛のよき友にして、同じ道場の四天王と言われた榊原采女(西島秀俊)を助けてほしいというものだった――。葉室麟の傑作時代もの『散り椿』を、大自然が醸す力を物語に変える監督、木村大作がメガホンを取り、映画化した。主演は、時代物で若手随一の定評がある岡田准一。木村監督に、その能力に驚いたという岡田准一との仕事、そして大自然を映画にやきつけることについて語っていただく。
「人は大切に思うものに出会えれば、それだけで幸せだと思っております」これは、映画にできると思った
── 時代劇ではあるが、現代的なテーマを内包する『散り椿』。葉室燐さんのこの原作を映画化しようと思ったポイントは? 木村監督:原作に、瓜生新兵衛(岡田准一)の台詞で『人は大切に思うものに出会えれば、それだけで幸せだと思っております』というのがあって、それを読んだときに、これは映画にできると思ったんだよ。例えば、いま僕がここにいるのは、18歳の時、黒澤明の『隠し砦の三悪人』(58年)(の撮影助手に)についたから (黒澤明は)ものすごい人でしたから。(そこで学べたことで)映画をやってこれたと、僕は思ってる。黒澤明との出会いは大きい。僕の人生の中でね。 もう一つ大きいのは、キャメラマンになってそれなりに映画の世界が分かってきたときに、森谷司郎監督の『八甲田山』(1977)をやって高倉健という俳優と出会ったこと。撮影は、過酷過ぎて、しゃべったらきりがないくらいのしんどかったけどね。高倉さんは、俳優を超えたところにいる人だった。そういう人に出会ったおかげで幸せなんだよ、今。 そんなふうに感じていたら、そのままの言葉が原作にあった。これはいけるなと。『散り椿』は、お家騒動の話で、最後は黒幕まで出てくる複雑怪奇な作り。でもそのままやろうとは思ってなくて、里美(黒木華)と篠(麻生久美子)の姉妹を前面に出して、それに対する新兵衛と榊原采女(西島秀俊)の偲ぶ心というか、男と女の心の綾を前面に出して、そこにチャンバラや、お家騒動がある映画にしたいと思ったわけ。時代劇をやるなら、やっぱりチャンバラやりたいんだよね。エンタテインメントというか。それができるな、と。それが『散り椿』をやろうと思ったきっかけだね。