「500日間の地下洞窟暮らし」に、彼女は何を持ち込んだのか? 洞窟の中はどんな感じ?
家族と疎遠になってでも山での暮らしを選んだベアトリス・フラミニは、やがて「ゴビ砂漠を単独横断する」という夢を抱くようになる。だがそのためには、長期間の孤独に慣れる必要があった。彼女は「本当の夢を叶えるための準備」として、500日間の洞窟暮らしを決意する。(この記事は2回目/全7回) 【動画】500日の地下洞窟生活を終えたばかりのベアトリス・フラミニ
自分の理想のやり方で過ごす500日
フラミニは、洞窟で長期間過ごした人たちの話をネットで読んだ。洞窟滞在の最長記録は463日で、1970年にセルビア人のミルチン・ベリコビッチが、スヴリーグという町の近くの洞窟で打ち立てた記録だった。 だが、フラミニが思い描くような方法で洞窟に暮らした人は誰もいなかった。 「彼らは腕時計をつけたり、毎日のように誰かと電話で話していました。家族に食料を運んでもらったり、ペットを飼っていた人もいたんです」。たとえばベリコビッチは、電話のコードを極端に長く伸ばして近くの村と連絡を取り、ラジオを聴いて世のなかの出来事を把握していた。 フラミニはベリコビッチの記録を破るだけでなく、自分が正攻法だと思うやり方で挑戦しようと決意した。「区切りがいいので500日間を目標に定めました。自分ならやり遂げられると確信していたからです」
現実的な問題にぶつかる
「自給自足」がモットーのフラミニは当初、スペインで誰も足を踏み入れたことのない洞窟を見つけ、1年分以上の食料と水を持ち込み、すべて消費し尽くしたら戻ってくるという計画を想定していた。そして戻ってきたら、モンゴル行きの切符を買うのだと。 ところが、熟練の洞窟探検家に助言を求めたところ、500日連続で洞窟で過ごすのは不可能だと告げられた。2000食分の食料と950リットル以上の水が必要となるうえ、洞窟から出ずにゴミを外に出すことはできないからだ。 計画を実行するには、協力してくれるチームが不可欠だ。それに、彼女が緊急時の備えもなく一人で洞窟に留まることを許せば、洞窟探検家たちの安全規範に反することになる。 フラミニは妥協を知らない人生を歩んできたが、今回ばかりは譲歩が必要だと思った。そして、地上にいる人に一方的に連絡するため、洞窟内に監視カメラ2台とパニックボタン、PC、データを送信するためのWi-Fiルーターを設置することに同意した。 それでも、地上からのメッセージを受信したり、リアルタイムで通信できる類のデバイスはいっさい持ち込まないと決めた。そのため、ある程度のリスクは覚悟しなければならなかった。パニックボタンやカメラの届かないところで足を骨折し、助けを呼べないということもあるかもしれない。 だが彼女は、そうした危険に遭う可能性を受け入れ、歓迎すらした。自分が大惨事に立ち向かう姿をイメージしようとした。「苦痛や絶望に直面し、死が間近に迫っているとき、自分は冷静でいられるだろうか?」と。