マサバ、昔は大衆魚、今や高級魚 生け締めの刺し身が絶品【ぼうずコンニャクのうますぎる徳島のさかな第95回】
一般的に「サバ」と呼ばれている魚は、国内産のマサバ、ゴマサバと、ノルウェーなどから輸入されているタイセイヨウサバの3種だ。 「幻の魚」巨大アカメ釣ったど~ 海陽町の浜部さん、体長120センチ 今回の主役であるマサバは「本サバ」「平サバ」とも呼ばれ、北海道から九州までの沿岸域を大きな群れを作って回遊している。昔は大量に水揚げされ、単に「サバ」と言えばマサバのことだった。 安い魚の代名詞で、私の故郷、つるぎ町貞光でもよく塩サバを買っていた。大人が昼ご飯に食べていて、「あんなに塩辛いものをよく」と思っていたが、昔ながらの塩サバを食べてみると、塩分は気になるが、非常においしいので驚いた。 そのマサバがあまり取れなくなって久しい。鳴門の対岸・淡路島は有名な産地だが、好不漁の波がある。県内ではまとまって取れない。今や大型のマサバは超高級魚で、都内では1尾1万円が当たり前になっている。 大阪船場の伝統料理に「船場汁」がある。マサバとダイコンだけの塩味の質素な汁だ。昭和のドラマ「君の名は」を書いた菊田一夫は子供の頃、船場ででっちとして働いていた。苦難の中で「一番うまかったのは船場汁」と述べている。ダイコンとマサバだけで作れるので、まねしてみてはいかがだろう。 定番料理「サバのみそ煮」もおいしいし、フライにしてもうまい。最近は刺し身にすることも多い。生け締めの刺し身は絶品だ。食感が強く、かみ締めるとうま味が大量ににじみ出てくる。マサバの値段の高騰は、刺し身で食べるようになったからだという人もいる。 東日本で「締めサバ」、関西などで「きずし」と呼ばれる酢じめも人気がある。これで作られるのが「バッテラ」だし、「棒ずし」である。 マサバにはいろんな食べ方があるが、一番おいしいのは何だろう。迷わずに「塩焼き」と言いたい。脂の乗った秋のマサバに振り塩をして焼くだけの単純な料理である。都会では無理だが、七輪で焼き上げるとこの上なくうまい。少し黄色くなったスダチを搾り、焼きたてをワイルドに食べながらビールといきたいものだ。(水産アドバイザー、本名・藤原昌髙。東京都在住、つるぎ町出身) マサバ スズキ目サバ科。北海道から九州までの沿岸域に生息。大きくなると体長50センチ、重さ2キロ以上になる。古くは大衆魚で安い魚の代名詞だったが、近年は高級魚となり、1キロ以上のものは驚くほどの高値がつく。徳島でも昔はたくさん取れていたが、近年は低迷気味だという。