自由なAI対話が魅力の『ドキドキAI尋問ゲーム 完全版』に感じた、“ゲーム体験を変える”ポテンシャル
画像生成AIやChatGPTの登場で、AIを用いることはどんどん身近になってきた。昨今、ゲーム分野でもAIを活用したゲームはたびたび話題になっている。特にChatGPTのような生成AIによるテキストを活かしたゲームはユニークなタイトルが多い印象で、筆者もその動向に注目しているところだ。 【画像】コミカルなやり取りも発生する『ドキドキAI尋問ゲーム 完全版』のスクリーンショット 今年5月末にリリースされた『ドキドキAI尋問ゲーム 完全版』も、ChatGPTを活用し好評を得ているタイトルだ。小規模でサクッとプレイできるゲームでありながら、ChatGPTを活用しているからこその面白さが感じられる作品だ。 今回はそんな『ドキドキAI尋問ゲーム 完全版』を簡単に紹介しつつ、ChatGPTを活用したゲームの可能性について探っていきたい。 ■AIに尋問し自白させろ! 自由なやり取りが面白い 本作ではプレイヤーは警察官となり、ChatGPTが演じる殺人事件の容疑者AIを尋問する事となる。チャット欄に質問を入力すると、それにAIが返答する仕組みで、7回以内に自白させることができればクリアとなる。 なお、本作ではAIの自白後から本当の「AIとの対話」が始まる。ネタバレになるので詳細は控えるが、AIを活用したことが物語のなかでも意味を持っており、それもAIについて考えさせるような内容となっている。 ゲーム紹介によると、AIには感情回路があり、人間のように心拍数も設定されているとのことだ。尋問で追い詰めれば心拍数も上がり、自白に近づいていることが分かる AIとの対話は無限の可能性があり、さまざまな手法で尋問を進めることが可能だ。たとえば、優しい言葉で自白を誘導したり、ロジックでネチネチ詰めたり、時には言葉を荒げ恫喝するような問題のある手法を取ることもできる。どのような手法をとってもAIはそれに応じた反応をしっかりと返してくれるので、自分だけのストーリーを楽しめる。 また、本作のAIはまったく関係のない雑談や指示でもAIが反応してくれる。最近やったゲームの感想を聞いてみたり、ラップで返答させてみたりといった指示を出せば、完璧な返答は得られないものの、それなりの反応を返してくれる。AIがどこまで返してくれるか、どんな反応を示すかを試してみるだけでも充分に面白い。 ■ChatGPTを活かしたゲームの可能性 本作でも見て取れるように、プレイヤーが行なった入力に対して、AIがどんな反応を示すのかを試すことは、それだけでもひとつの遊びとして楽しむことができる。本作を一度クリアしていても何度も再プレイし、思い思いのことを聞いてしまうのは発展途上のAIならではの遊び方だ。 同時に、本作を通じて感じるのはゲームの進行をAIに任せる、ゲームマスターの役割としてのAIの可能性だ。本作では、AIとの会話を通じて微小ながらに物語が変化し、クリア後のやり取りではその傾向をより感じることができる。本作は「AIとの対話」という限定的な関わりではあったものの、これを拡大していけばよりさまざまなシチュエーションやジャンルへの応用も可能だ。 現在、ChatGPTを用いたゲームには、プレイヤーが勇者にアドバイスをし、AIがそれを基に進行する『チャット転生 ~ 死んだはずの幼馴染が異世界で勇者になっていた件(体験版)』や、ダンジョンやモンスターをAIで生成し、ダンジョンの生成や進行もAIが行なう『無限AIダンジョン』といったRPGを基礎としたタイトルが存在し、AIがゲームマスターの役割を持っている。 また、RPG以外でも、オリジナルキャラクター同士を戦わせ、AIがジャッジとして活用した「AIバトラー」や、ChatGPTを用いたウミガメのスープが遊べる「Yesonor(いえそな)」など、AIが判定をしてくれるタイトルは小規模ながら意欲的な作品が登場している。 ゲーム世界の進行をAIに任せることは、ゲームに必要な人数を集めやすくなったり、ジャッジを公平にしたりといったメリットに加え、プレイヤーの行動や発言に対し、AIが的確な反応をしてくれれば、ゲーム体験がよりリアルで没入感のあるものになるだろう。 また、AIがプレイヤーとのやり取りを通じて学習することで、よりゲームとしての精度が高くなっていくことで、プレイヤーの体験もよりよくなっていくはずだ。 もちろん、AIに課題がないわけではない。「ドキドキAI尋問ゲーム 完全版」において、すべての尋問に対して期待するような反応を返してくれるわけではないことからも分かる通り、AIの言語能力は人間には追いついていないため、どうしてもAIとのやり取りには限界がある。プレイヤーがAIの裏をかいたり、ゲームから逸脱した行動をした際の対応も難しいだろう。また、著作権の侵害といった多くのAI生成ツールが抱える問題も共通している。 とはいえ、今後もAIの進歩と学習が進んでいけば、TRPGのような複雑なゲームのゲームマスターをAIが代替する日も遠くはないだろう。AIはストーリーを執筆・添削するなど、制作の役に立つだけでなく、ゲームの体験そのものを変えてくれるポテンシャルを秘めている。 『ドキドキAI尋問ゲーム 完全版』は、短編でありながらこうしたAIの可能性も感じることができるものとなっているので、ぜひともプレイしてほしい。
堀江くらは