低年俸で「移動のお金がない」…深夜の昇格電話 妻のヘソクリ10万円が生んだ初HR
今でも忘れぬ感謝「あのお金がなかったら…」
チームに合流した21日は相手が右投手だったこともあり、練習を終えると首脳陣から「ホテルで眠っておけ」と本隊と離れて体調を整えた。迎えた22日、対前川要員として「8番・一塁」でプロ初スタメン。第1打席は三ゴロだった。しかも、この試合は西武打線が天敵の前川を攻略し、早々に右投手にスイッチしたことで犬伏氏も鈴木健と交代した。 翌23日、本拠地・西武ドームに戻ってのオリックス戦。この試合も左腕の金田政彦が先発とあって「7番・指名打者」で出場すると第1打席でプロ初アーチとなる2ランを放った。試合も2-1で勝ち、犬伏氏の記念弾でチームは勝利を掴んだ。 「大慌てで大阪にいって、チームと一緒に戻ってきてプロ初ホームラン。あのお金がなかったらどうなっていたことか……。嫁が打たせてくれた初ホームランです」。家族がスタンドで見守る前で輝いた“脇役”。「移動費用はもちろん、後日球団には請求させていただき戻ってきましたけどね」。四半世紀近く立った今でも、妻への感謝の思いを忘れてはいない。
湯浅大 / Dai Yuasa