優良マンションの「認定制度」が抱える死角、「居住者名簿」の扱いが管理会社によって異なる
保険金を請求して事故処理に当たる場合、管理会社が懇意にしている設備工事会社と結託すれば、管理組合に気付かれることなく過大請求をすることすら可能になる。そして損害保険を使えば、保険料の値上げという形でマンション管理組合に不利益をもたらす。 だからこそ、認定要件には「管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、1年に1回以上は内容の確認を行っていること」を挙げている。
管理組合は個人情報保護法で定める「個人情報取扱事業者」だから、名簿の保管場所や鍵の管理などについて厳格なルールを設け、適切な保管・管理がされていることは大前提だ。 ■情報の帰属先は「管理会社」か「管理組合」か 組合員名簿と居住者名簿。どちらの名簿も管理会社が窓口となって集めることがほとんどだ。認定制度の取得を目指す管理組合は当然、管理会社に名簿の提供を求める。ところが管理会社が個人情報保護を理由に、管理組合に対し提供を拒むケースがあることが筆者の取材で判明した。そうなると管理組合は、いちから居住者の情報を取り直さなければならなくなる。
本稿執筆にあたり、組合員名簿及び居住者名簿の開示を管理組合から求められた際の対応を、管理会社大手10社に問い合わせたところ、回答を拒否した日本ハウズイング以外の9社中、三井不動産レジデンシャルサービスだけが、「居住者名簿は渡さない。区分所有者名簿はそもそも作成していないので渡すことができない」と回答した。同社は「居住者名簿は業務上の必要性から、入居時に居住者から直接取得している。居住者名簿はあくまでも管理会社に提出いただいており、管理組合に提出するフォーマットになっていない」と説明する。
ほかの管理会社の場合、居住者名簿のあて名は、管理組合と管理会社になっている。ところが三井不動産レジデンシャルサービスは、2022年8月まで三井単独になっている書式だった。つまり、入居者から提供を受けた個人情報は三井のものであり、管理組合のものではないという主張である。 管理認定制度で居住者名簿の整備が条件に入ったため、2022年9月以降はあて名に管理組合も入れた書式に変更したが、それ以前に集めたものは従来通りの対応を続けている。