中国政府が主催 1万人合同結婚式の背景に深刻な「結婚離れ」【WBS】
22日、中国で政府が主催した合同結婚式には実に1万人が参加し、これまでに例のない大規模な催しとなりました。こうした式典を開催した背景には中国が今抱える、ある社会問題が大きく影響しています。
中国・北京。世界遺産の故宮に隣接する公園で、道の両端に何かが書かれた白い紙がズラリと並んでいました。歩いていると、女性から「うちの娘を結婚相手にどう? とてもいい子だよ」と声をかけられました。 道に置かれた白い紙には「身長175センチ以上」「安定した職業」「大卒以上」など結婚相手に求める条件が書かれています。この紙、いわば“婚活チラシ”です。公園にいたのは熱心に子供の婚活に取り組む親たち。公園にはチラシを読み込み、我が子の結婚相手を探しに来る親の姿もありました。 しかし、公園にいた人からは「結婚を願う親は多いが子は違う。結婚を望まない若者が多すぎる」「裕福な人はいいが、そうではない人には結納金が高すぎる。うちの子は金がないから子供をつくる勇気もないと言っている」と声が上がります。実は中国では今、婚姻件数が急減しています。去年はピークだった2013年から半減。さらに、今年の上半期は343万組と前の年から1割以上減少していて、社会問題となっています。 中国では、男性側が高額な結納金に加え、家や車など、日本円で数千万円を支払うケースもあり、景気が停滞する中で、結婚離れが加速しているのです。
さらに中国では去年だけで1万4800件の幼稚園が閉園。背景にあるのは急速に進む少子化です。去年の出生数は902万人と建国以来、過去最低を更新。婚姻件数の減少と比例するように出生数もこの7年間でおよそ半数に急減しています。 そうした中22日、中国沿岸部の山東省で開かれたのが、合同結婚式。会場には中国の伝統衣装に身を包んだ大勢の新婚カップルたちが手を繋ぎ、幸せそうな表情を浮かべていました。政府主催のこの合同結婚式には過去最大規模となる男女5000組、合わせて1万人が参加。中国各地の50の会場をオンラインで繋ぎ、一斉に開催されました。 その狙いは? 「高額な結納金という悪しき習慣を捨て、誠実と真の愛で結婚を迎え、簡素で温かいやり方で愛を祝おう」(司会者) 式の参加者たちには、結納金は支払わないとする誓約書への署名が義務付けられるなど、金のかからない結婚をアピールする狙いです。 急速な少子化に危機感を抱く習近平指導部。これまで結婚に必要だった親が管理する戸籍簿の提出を不要とする条例の改正案を先月公表。男女の同意だけで結婚できるようにする方針です。 あの手この手で婚姻数を増やそうと躍起になっていますが、当の若者たちからは「(簡素な結婚式でも婚姻数は)増えないだろう。社会的な圧力が強すぎて、若者は結婚したくない人が多い」「なにかと金がかかる。一人の生活は自由だが、家族ができると束縛される」との声が上がっており、政府肝いりの合同結婚式で婚姻数の増加に繋がるかどうかは不透明です。 ※ワールドビジネスサテライト