同じ見た目の「感情をもたないゾンビ」と「人」を見分けられる? あなたの思考力を問う2問
日々、膨れ上がる情報の波を前に過ごしている私たちだが、情報に振り回されないために必要なのは、やはり「自分の頭で考える力」ではないだろうか。そんな力を鍛える最適な方法として注目されるのが、実際の実験を行わずに頭の中で問題を考える「思考実験」である。 思考実験は、いわば考えるゲームのようなもの。楽しみながら取り組めて、思考力も身につけられる現代人の強い味方だ。ここでは、企業研修で思考実験を積極的に行う笠間リョウ氏の著作より、哲学的思考のおもしろさに触れた問題を2つ紹介する。 ※本稿は、笠間リョウ著『頭がいい人の論理的思考が身につく!大人の思考実験』(総合法令出版)より一部抜粋・編集したものです。
ゾンビウイルスで生き返った死人と人間の違い
「哲学的ゾンビ」の思考実験をしてみましょう。 今は20XX年の未来です。医療や科学技術が進歩し、ウイルスや人工知能、ロボットの研究でも大きな進展が見られます。ある研究チームが、死人を生き返らせることのできるゾンビウイルスを開発しました。このゾンビウイルスで生き返った死人は外見や行動、言語能力など、元の人間に非常に近い能力を持っています。 この研究チームは、元の人間の脳の構造と機能をほぼ完全に生き返らせるウイルスを開発しましたが、このゾンビウイルスでゾンビとなって生き返った死人には意識や感情が全く存在しないことがわかりました。 つまり、このゾンビは外見や行動だけでなく、物理的にも全く人間と同じように振る舞いますが、意識や感情がありません。このゾンビは周囲の環境に反応し、知覚し、行動しますが、それらの反応はすべて機械的な計算処理によって実現されているとされています。 果たして、あなたはこのゾンビを見分けることができるでしょうか? 「哲学的ゾンビ」とは、物理的には人間と同じような外見や行動をしながら、内面に意識や感情が全くない存在です。この思考実験は、意識や心の問題を探求するためにオーストラリアの哲学者デイビット・J・チャーマーズによって考えられました。