「民族の悲劇終わっていない」ウイグル協会長 カナダ、人権侵害関与で中国高官に制裁発動
日本ウイグル協会のレテプ・アフメット会長は14日、カナダ政府が中国新疆ウイグル自治区などで重大な人権侵害に関与したとして中国政府高官らに制裁を発動したことについて、産経新聞のインタビューに応じ、「世界は『ウイグルジェノサイド(民族大量虐殺)』から目を離していない。われわれにとって希望のメッセージになる」と歓迎した。要旨は以下の通り。 ◇ ウイグルジェノサイドに関わった中国政府高官の責任は追及され、制裁から逃れるべきではない。 ウイグル問題を巡っては2021年3月、カナダや米国、英国、EU(欧州連合)が一斉に制裁を発動した。政府高官ら個人に対するカナダの制裁は、それ以来ではないか。 この2年近く、ウクライナ戦争や中東情勢に人道問題を巡る国際社会の関心が移ってしまった。中国政府は「ウイグルジェノサイド」は終わったかのような雰囲気を広げようとしている。そうした最中に制裁が発動されるのは重要な意味を持つ。民族の悲劇はまだ終わっていない。 強制収容政策を主導した元ウイグル自治区党委員会書記の陳全国氏に制裁が科された。現職のウイグル自治区政府トップ、エルキン・トゥニヤズ人民政府主席も含まれていた。 現職のトップへの制裁は極めて珍しい。ウイグル自治区のトップとしてふるまう現職の役人に制裁を科すのは、今も犯罪行為を犯しているからやめろというメッセージになる。 各国政府はカナダ政府の対応を見習ってほしい。23年2月にカナダ下院は世界中に散らばるウイグル人避難民1万人の受け入れを政府に求める動議を可決し、今月初旬に最初の1人が東南アジアから到着したと報じられた。 トランプ次期米大統領の存在にも期待を寄せている。前政権時はウイグル人弾圧に関わった中国政府高官らに制裁を科す「ウイグル人権法案」が成立し、「ジェノサイド(民族大量虐殺)」が実施されている可能性にも言及された。ウイグル自治区産の物品輸入を全面禁止する「ウイグル強制労働防止法案」などを推進したルビオ上院議員も次期国務長官に指名された。 カナダも中国とは経済的な利害関係を抱えている。それでも、ウイグル自治区の迫害に関する情報を収集し、一定の根拠を得たからこそ、今回の発動に至ったのだろう。情報はやる気になれば、手に入る。日本の政治家も「情報がない」と言い訳しないで、この問題に向き合ってほしい。(聞き手 奥原慎平)