台湾総統選「安全保障よりも経済」 現地取材でわかった「有権者の意外なポイント」
地政学・戦略学者の奥山真司が1月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。民進党・頼清徳氏が当選した台湾総統選について解説した。
中国が台湾周辺で総統選以降初の大規模な軍事行動
台湾の国防部は1月17日夜、18機の中国空軍機が台湾周辺を飛行し、中国の軍艦と「共同戦闘準備哨戒」を行っているのを確認したと発表した。13日に実施された台湾総統選以降、初めての大規模軍事活動としている。
安全保障よりも経済にポイントを置いている
飯田)総統選の際、奥山さんとは台北でお会いし、日本語の堪能な台湾の方をご紹介いただきました。 奥山)私も現地で取材していました。日本から見ると、今回の選挙は「中国との関係」にフォーカスされがちですが、現地の人に話を聞くと、「とにかく経済だ」と言います。 飯田)そうですね。街頭インタビューをして驚きました。「何にポイントを置いて投票しましたか?」と聞くと、「経済です」と皆さんおっしゃるのです。 奥山)安全保障はもちろん大事なのですが、そこは大前提の部分であり、インフレに対して給料が上がっていないところが問題とされています。
民進党にかつての勢いはなく、総統選はギリギリで勝利 ~立法院は過半数を維持できず
奥山)現地に行って思ったのですが、民進党自体が既にエスタブリッシュメントというか、既存のエリートのような状態になっていて、かつての「中国に対抗する新しい政党になろう」というような勢いはありませんでした。総統選は「辛勝」という形で、「ギリギリで勝った」という印象でした。 飯田)4年前は蔡英文さんが約800万票を獲りましたが、今回は約558万票でした。 奥山)議席も、日本の国会にあたる立法院では、62議席から51議席に減らしています。 飯田)第1党は国民党の52議席です。 奥山)野党の方が多く、ねじれになってしまったところが「内向きだな」と感じます。
民進党、国民党、民衆党、それぞれの違い
奥山)3陣営すべて見ましたが、最もお年寄りが多いのが野党・国民党で、ものすごく組織立っている。民進党は少しばらけていました。今回、大躍進した野党の第3党にあたる柯文哲さん率いる民衆党は、若者しかいなかった。踊りや人形を使っていましたが、世代の差を感じました。 飯田)民衆党(支持者)は家族で来ていても、お子さんがとても小さかったですね。 奥山)国民党へは最後に行きましたが、目立っていたのが椅子です。 飯田)プラスチックの。 奥山)高齢者の方が多いので、椅子が並べられているのです。しかも、国民党のイベントは分刻みで決まっており、秩序立っていました。地方から婦人団体や農業団体のような形で来るのです。「陸軍40期の同期会」というような団体もありました。こういった世代の差は現地で取材しないとわからないですね。 飯田)旗を持って、「こっちですよ」と先導していましたね。 奥山)国民党としては、スケジュールをきちんと守らなくてはいけない。 飯田)飽きさせてはいけないというような。 奥山)そういう意味で、国民党は秩序が大事なのだなと思いました。カラーが出ていましたね。