館林の“ズル林”疑惑は「濡れ衣」か 気象台、関係者が完全否定
ここで、疑問の一つをぶつけた。気象庁の基準では、照り返しによる影響を防ぐため、地面は「芝生」を推奨しているはず。なのに、館林の観測所の地面は人工的な「シート」ではないか?この指摘に対し、担当者は「たしかに、2007年ごろから防草シートに変えています。ですが、これは一部で言われるような『ビニール製』ではない。布製で、気温への影響のないものです。館林だけでなく、全国の多くの観測所で、このシートを使用しています」と話した。 「ズル林」という呼び名については、「気温は順位を競うものじゃないんですけど…。そもそも、関東の内陸部は、温かい空気が抜けにくく、気温が高くなりやすい。熊谷、伊勢崎など、近隣の観測所でもちゃんと高い値が出ています」と、館林が特別でないことを強調した。 気象庁は、国土交通省の外局で、国の組織であるため、特定の地域に肩入れすることは考えにくい。では、観測所がある地元の館林消防署はどうなのか?話を聞くと「うちは場所を貸しているだけで、ずっと何も変わりませんよ。ただ、観測所の周りに大きなサクラの木が5本あるが、毛虫などが出るので、5年以上前に枝をかなり伐採したくらい。その前も後も、暑さは変わらない。今年の夏も、もう何とかしてくれ、と思うぐらい暑い街ですよ」と、暑さは本物だと力を込めた。 本当に館林は暑いのだろうか?それを証明する一つの調査があった。館林市は2002~2007年度、「市民一斉気温測定」を実施していた。気象庁のアメダスに限らず、市内の幅広い地点における気温分布を調べたものだ。 2006年8月6日午後2時、市民92人が、市内48か所を調査。そのデータによると、気象庁のアメダスでは「34.9度」を示していたのに対し、市内の各地では39.3~31.8度と幅広い気温を記録。この平均値を算出すると「35.4度」。なんと、アメダスよりも0.5度高い結果だったのだ。市民の気温測定が正しいとすれば、館林はズルをして気温を高めているどころか、むしろ控えめということになる。 今回の取材を通じて、「ズル林」という呼び名に、館林の関係者は全くと言っていいほど無反応だった。そこにも館林の暑さへの揺るぎない自信がうかがえ、ネットでの疑惑は濡れ衣である、という雰囲気を強く漂わせていた。 (文責・坂本宗之祐)