【小高避難解除8年】空き家の有効活用を(7月17日)
東京電力福島第1原発事故に伴う南相馬市小高区の避難指示解除から、12日で丸8年を迎えた。帰還者、移住者は微増が続いている。地域活性化に向けてさらなる人口増を目指すには、空き家を有効活用するなど新たな施策が求められる。 南相馬市によると、原発事故発生前の2011(平成23)年2月の小高区の人口は1万2834人、避難指示解除から8カ月後の2017年3月末は1488人だった。その後2年間は千人前後ずつ増え、2019年3月末には3497人、5年後の2021(令和3)年3月末は3752人に達した。以降の伸びは2桁程度が続き、今年5月末時点の人口は3858人となっている。 時間の経過とともに子どもや若い世代が避難先に定着している現状がうかがえる。一方で、起業や新たな生活を求めて県内外から移住する人は年々、増えている。2023年度は移住した35世帯(52人)のうち40代以下の世帯が6割を占めた。若い層を中心とした移住者の受け皿をいかに整えるかは、人口を増やす鍵となる。
移住希望者には戸建ての賃貸物件を求める傾向があるという。南相馬空き家・空き地サポートセンターが昨年度実施した調査によると、小高区の空き家は545軒で全世帯に占める割合は20・8%だった。原町区や鹿島区の約3倍に当たる。 545軒のうち売却を希望しているのは22軒、賃貸希望は5軒となっている。空き家を有効活用しようと、サポートセンターは、賃貸向けに提供するよう所有者に促す事業を進めている。この一環として、物件の修繕を借り手が担うのを前提にした賃貸も提案している。 老朽化した空き家の所有者に対し、修繕費を負担せずに貸し出せるという条件を示せれば、提供してくれる数が増えるのではないか。借り手にとっては、好みに合った改築が可能になる。DIY(自作)を取り入れれば、費用を抑えられるだけでなく、改築する楽しみも湧く。地元の業者が指導に当たれば、地域との交流が深まるだろう。 新たな試みによって、移住者の受け入れ拡大に向けた基盤が、より充実するよう期待したい。(平田団)