夫婦生活のリアルとタブー。ごまかしきれなくなった“公認不倫”のほころび 『1122 いいふうふ』1~3話
常に変化し続ける夫婦と婚外恋愛のカタチ
しかし、そんな二也もまた善人だけでは終わらない。美月に「息子と3人で暮らせないか?」と荒唐無稽かもしれない質問をされて、正直“重い”と思ってしまう。美月が夫の赴任先のシンガポールに行くことが決まれば、どこかで安堵している自分を認める。 残酷な話ではあるが、セックスレスの問題1点ですれ違いが生じた相原夫婦と、そもそもかなり根深いところから認識のズレがあるだろう柏木夫婦では、二也と美月それぞれにとって婚外恋愛に求める要素やその比重は当然異なってくるものだろう。家庭内に一息つける瞬間さえないだろう美月。相原家の“公認不倫”は、盤石な家庭の上に成り立つもので、二也との関係は「お遊び程度」だと、自分の存在が軽んじられてしまっている気がしたに違いない。 最後のデートで美月に「夫婦再構築」を言い渡してしまう二也の姿は、一子の大学時代の友人・五代敦史(成田凌)のどこか軽薄で、だけれども人間臭く、情けないほど自分本位な姿と重なる。 一方、一子は自身の性欲や寂しさを埋め合わせるために女性用風俗の門を叩くが、本来の問題が解決していないままの状況下で得られた満足度の持続性はいかほどか。「性の部分はそれぞれ個人的なもの」「それぞれの性はそれぞれのもの」とは一子の言葉だが、最も身近にいるパートナーとそのすり合わせが出来なければ、一体誰とその話題を共にすればいいのだろうかという疑問が浮上してしまう。 3話最後に描かれる美月の衝撃的な行動が、図らずも相原夫婦にダイレクトにもう一度性に向き合うきっかけを与えることになりそうだ。ちょっぴり情けなくってそれぞれに自分勝手なところも否めない等身大の彼らは、どう関係を再構築していくのだろうか。
『1122 いいふうふ』 2024年6月14日(金)からPrime Videoで独占配信 出演:高畑充希、岡田将生、西野七瀬、高良健吾、吉野北人、中田クルミ、宇垣美里、土村芳、成田凌ほか 原作:渡辺ペコ 監督:今泉力哉 脚本:今泉かおり 主題歌:『i-O(修理のうた)』スピッツ 企画・プロデュース:佐藤順子 製作:murmur 制作プロダクション:Lat-Lon
文:佳香(かこ)