静岡県東部の“交通要衝” 道路の無電柱化で災害被害軽減 能登でも一定効果
災害時、電柱が倒れて道路をふさいだり、停電が長引いたりする可能性があるとして、国は全国の道路で無電柱化を推進している。孤立が懸念される伊豆半島への結節点になる清水町の国道1号でも、無電柱化の計画が進む。幹線道路の防災機能を上げるとともに、地元の観光スポットの景観を形成して観光振興も目指す。 ■観光客の安全も確保 無電柱化を計画しているのは、同町玉川から八幡までの約800メートルの区間。電線を車道側の地中に通すことで、道路両側の電柱を抜く計画だ。この区間は東名高速道のインターチェンジ(IC)や首都圏方面に通じるため、交通量は平時から多い。玉川の交差点は、町役場や指定避難場所となっている小中学校につながる県道144号へとアクセスする道になり、無電柱化を進める優先度が高いとされる。また、随一の観光スポットの柿田川公園前を通る道で無電柱化を行うことで歩道を広く確保し、災害時の観光客の安全確保が期待される。 無電柱化によって、地震発生時に電柱が道路に倒れて緊急車両などの進行を妨害する危険性がなくなる。国交省沼津河川国道事務所によると、能登半島地震では、石川県輪島市内の国道や広域農道で、電柱倒壊や倒木の電柱接触などにより、応急復旧作業に支障が生じた。一方で、同市や七尾市の無電柱化が実施されていた道路では、車両通行の支障になるような被害は見られなかったという。 電線は感電の恐れがあり、倒壊した場合には電力会社でなければ撤去ができない。電柱倒壊時には、電線管理者に連絡を取り、作業を待つ時間も発生する。東京電力パワーグリッドによると、地中化で電線撤去の懸念はなくなるほか、台風による飛来物の被害も受けなくなるといったメリットがあるが、地上に電線を通す場合よりも停電時などの復旧や改修作業は難しくなるという。担当者は「国や自治体の示す計画に沿って協調するとともに、災害時も安定的な電力供給ができるよう迅速に対応したい」とした。 清水町での無電柱化事業には、総額15億円の費用が見込まれる。現在は調査、設計の終盤に差しかかり、工事に向けて行政など関係機関との協議を進めている。周辺の県道や町道でも無電柱化を進めることで、さらなる防災機能の向上が期待できるが、多額の費用が課題。自治体の限られた予算内で、優先順位を決めながら進めていく必要があるという。 沼津河川国道事務所ではほかに、御殿場市の国道138号などでも無電柱化を進める。松本康弘事業対策官は「能登の震災でも、無電柱化がされていたところは被害が比較的少なく、一定の効果があることは明らか。半島での震災ということから、伊豆半島でも同じ状況が考えられるため、早急に事業を進めていければ」と述べた。 ■静岡県も推進計画策定 コスト課題も 進捗は「順調」 国の無電柱化推進を受け、県も計画を策定。2022~25年度の4年間で新たに事業に着手する道路の延長目標を72キロと設定した。コスト面が課題に挙がる一方、23年度時点の進捗[しんちょく]率は47・2%で、県の担当者は「順調に進んでいる」とみる。 静岡県によると、無電柱化の主な工事方式となる「電線共同溝」では、1キロあたり5億円超の費用がかかるとされる。道路両側で実施するため、実際の道路の長さは約500メートルとなる。近年は人件費や資材高騰の影響も受けている。すでに道路内に埋まっている埋設物もあり、工事に向けた調整に時間を要する。 静岡県は現計画の進展具合を踏まえ、26年度以降の次期計画の策定を目指す。
静岡新聞社